日本の大都市圏を支えている交通ネットワーク網に甚大な影響を与える災害リスク,特に,橋梁火災に対して,熱履歴を受けた橋梁の安全性についての総合的な評価手法については構築されておらず,損傷状況や安全性について適確に判断がなされていないのが現状である. そこで,本研究は,後に重要となる交通を再開した際の力学特性,特に,火災の熱により亀甲状のひび割れが生じるなどの損傷が見られる鉄筋コンクリート床版を有する合成桁の疲労耐久性に関して解明することを目的としている. まず,支間長:7.0m,供試体長:7.3mの中央4.0mを対象に加熱試験(最高加熱温度:680℃,時間:30分)を行い,その前後で静的載荷試験を行った.その結果,加熱によりハンチ部や床版下面に生じたひび割れによる剛性の低下が確認された. つぎに,活荷重により発生する支間中央部の応力度が支間30mの合成桁橋における応力度と同程度となる荷重(最大:320kN)で繰返し載荷試験を行い,ひずみおよび変位量の計測を行った.その結果,繰返し回数50万回以降,変位が著しく増加し,非合成挙動へと移行する傾向が見られた.そこで,コンクリート床版のはつりを行った結果,スタッド基部での破断が確認された.また,この結果より,ハンチ部や床版下面のひび割れ密度より供用再開後の疲労耐久性を推定する手法を提案した. 最後に,熱履歴を受けていない合成桁の繰返し載荷試験を実施し,熱履歴を受けた合成桁の繰返し載荷試験と比較・検討を行った.その結果,熱履歴を受けていない合成桁は,繰返し回数100万回時点において,概ね,合成挙動を呈していることが確認され,以上のことから,合成桁は最高:680℃,30分の熱履歴を受けることで,疲労耐久性が低下し,通行再開に向けての診断を行うに際し,留意する必要性があるとの結論に至った.
|