研究課題/領域番号 |
20K04683
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 憲正 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00325242)
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研究分担者 |
中田 幸男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90274183)
梶山 慎太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50803532)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メタンハイドレート / 生産 / 熱 / 地盤 / 流体 / 減圧 / 間隙比 / 粒子破砕 |
研究実績の概要 |
本研究では,海底下のメタンハイドレート濃集層を模擬し,加熱法によるハイドレート分解実験を行うことで,ハイドレート分解中の温度・圧力挙動について調べ,生産時に生じる現象を確認することと試料の熱物性を獲得することを目的としている.加えて,減圧法によるハイドレート分解によって生じる有効応力の変化とそれに伴い生産性に影響する間隙比変化を明らかにすることを目的としている.本研究の現時点での実績として,得られた結果をまとめる. A) 恒温高圧平面ひずみ実験機を用いた加熱分解実験 供試体内にメタンハイドレートを含む場合,砂のみの場合と比べて,温度挙動が変化し一定時間温度が停滞または低下する現象が確認された.また,メタンハイドレート分解時には圧力上昇がみられ,その大きさは供試体を形成する細粒分含有率に依存することが確認された.上昇した圧力が元に戻る瞬間とメタンガス産出率が急激に増加する瞬間が対応していることが確認された. 供試体内の温度分布から推定される分解されたメタンガス量の理論計算値と実験での分解メタンガス量の差の検討からメタンハイドレートの再生成が示唆された. B) 一次元の温度制御透水カラム実験機を用いた加熱分解実験 一次元の温度制御透水カラム実験機の実験結果から,豊浦砂,Tcの熱挙動には大きな差異がないことが確認された.また,供試体内にキセノンハイドレートを生成した場合,熱の伝達が早くなることが確認された. C) 減圧法を想定した三軸圧縮試験 メタンハイドレート含有砂に対して,減圧法を想定した水圧変化を与えた実験を実施し,有効応力と間隙比の関係を取得した.その結果,減圧することで有効応力が大きくなり,間隙比が大きく低下することが確認された.また,その際に,粒子破砕を伴うことも確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,恒温高圧平面ひずみ試験装置や一次元のカラム実験装置,低温高圧三軸試験装置を用いて,境界条件や応力条件の異なる環境で実験を進めている.それぞれの実験により,以下のような研究成果が得られている. 恒温高圧平面ひずみ試験装置を用いた検討では,メタンガスハイドレートを含む砂の供試体に対して,供試体下部より加熱することにより,メタンガスハイドレートを分解し,その際の供試体内の温度分布について調べ,温度変化挙動やガス生産挙動を明らかにした. 一次元のカラム実験装置を用いた検討では,キセノンガスハイドレートを含む砂の供試体に対して,供試体下部より加熱することにより,キセノンガスハイドレートを分解し,その際の供試体内の温度分布や間隙圧について調べ,温度変化挙動や間隙圧挙動を明らかにした. 低温高圧三軸試験装置を用いた検討では,減圧法による生産を再現し,それによる地盤内の間隙比変化や,その原因となる粒子破砕の発生について実験的に明らかにした. これらのことから,研究は,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,恒温高圧平面ひずみ試験装置や一次元のカラム実験装置,低温高圧三軸試験装置を用いて,砂のみ及びガスハイドレートを含む砂において,熱及び分解したガス等の流体の移動特性を実験的に解明し,それらのモデルを構築する.加熱法との比較として,減圧法による応力条件も再現した実験を行い,生産方法の違いから生産性への影響を検討する.今年度は,昨年度までの研究結果を踏まえて,以下に掲げるように,より発展的に研究を進める. 1. ガスハイドレートを含む砂における熱の移動特性の解明・・・種々の実験装置を用いた熱拡散実験を種々の条件で実施し,熱伝導率等を定量的に求め,熱の移動特性を解明する. 2. 砂中のガスハイドレートの分解速度に及ぼす影響要因の抽出と定量的評価・・・種々の実験装置を用い,分解領域に達する熱を供給し,種々の条件でハイドレートの分解速度を評価する実験を実施する.分解速度に影響を与える要因の分析とそれらの各要因に対する定量的評価を実施する. 3. 生産方法の違いによる生産性への影響の検討・・・加熱法と減圧法に着目し,応力変化による生産性への影響について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験時のガスハイドレートの生成など,実験に要する時間が当初の予定よりかかり,実験に必要な消耗品の購入量などが少なくなったため.研究結果は,順調に取得できていることから,今年度の研究に必要な物品や消耗品の購入に使用する予定である.
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