研究課題/領域番号 |
20K04684
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉田 秀典 香川大学, 創造工学部, 教授 (80265470)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 廃シロップ / 六価クロム / 無害化 |
研究実績の概要 |
資源循環型社会が望まれてる現在,破砕後の廃コンクリートを,路盤材として再利用する等の取り組みが推進されている.ただ,これらのリサイクル材料からは,六価クロムの溶出が懸念されている.そこで,六価クロムを三価クロムに還元し,低コストにて無害化する技術開発が進められている.そこで,本研究では,糖の還元作用を利用して,六価クロムの無害化技術構築の検討を行っている. この取組みの特色は,還元剤として,賞味期限を超過した廃シロップを用いたことにある.品質保持期限を超過し,メイラード反応により透明から黄色く変色した廃シロップは処分されることになるが,そのまま直接廃棄できないため,結晶化させた上で焼却処分するといったプロセスが必要とし,処分に高額な費用を要していた.コンクリートのリサイクル材の無害化に,廃シロップといったリユース品を利用することで,材料費を格段に抑えることが可能となる. 0.05ppmの六価クロム水溶液に対して,種々の糖および廃シロップを水溶液に対して0.5%の重量だけ混和し,これらの溶液を入れた容器を一定時間振とうさせ336時間静置した.廃シロップによる六価クロムの無害化を評価するため,これ以外に,フルクトース,人工的に製造した単糖類の糖も比較のために用いた.廃シロップの中に僅かに含まれる糖(知的財産の関係で具体的な名称の記載は不可)を単独で用いた場合,六価クロムを三価クロムに還元させた比率は100%で,全量,無害化できることが判明した.また,廃シロップはそれに次ぐ効果が得られた.これは,前述の通り,廃シロップには,その糖が含有されているためである.フルクトースでは,この2つほどの効果が得られていないことから,ある糖と,それを含有する廃シロップを無害化材として用いる意義が大きいことを確認した.なお,本発見は,研究代表者の所属組織より特許を申請した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地盤改良等では,セメント系材料が多用されるが,セメント系材料はその製造過程において六価クロムを含むため,地盤に投入されてから固結するまでの間に,六価クロムが溶出し,地盤や地下水を汚染する可能性がある.近年,自然災害等が増加し,地盤改良のニーズが増えていることに加え,国の六価クロム化合物に係る水質基準が厳しくなる予定であることから,六価クロムをより廉価で無害化でき,かつ,改良される地盤の強度を低下させないという両リクエストを満たす必要が有る. 六価クロムを無害化するためには,還元剤等を用い六価クロムを三価クロムに変化させるのが一般的である.六価クロムを三価クロムにする還元剤には,一般的に重亜硫酸ソーダか硫酸第一鉄が用いられる.重亜硫酸ソーダは2,000円/L程度,硫酸第一鉄は5,000円/L程度で,1kgの六価クロムを処理するには,重亜硫酸ソーダの場合で2~3倍の量が必要であることから,六価クロムの無害化にはかなりのコストがかかり,さらに,処理施設の場所を確保する必要がある.地盤改良に多用されるセメント系材料に含まれる六価クロムを低コストで無害化するためには,低コストを可能とする新たな無害化材が必要となる. そこで本研究では,糖類には還元能力があること,さらに,わが国では,賞味期限が切れた廃シロップは大量にあることに着眼し,本研究では,廃シロップをセメント系材料に混合することで,低コストで六価クロムを無害化することを目標としている. 「研究実績の概要」にて記載の通り,とある糖を用いることで,六価クロムを高い能力で無害ができる糖を同定し,また,それを僅かながら含む廃シロップにおいても,当該の糖に準ずる無害化の能力があることを突き止めたことから,研究は,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
【本研究課題の今後の推進方策】 「特殊な糖」は,特殊な還元力を有し,六価クロムを三価クロムへと無害化することができることは判明している.ただ,「特殊な糖」そのものは,決して廉価ではなく,この「特殊な糖」を,直接,工業製品等として利用できる可能性は極めて低い.この「特殊な糖」を含むシロップは流通されており,400gで約1000円で販売されているが,通常のシロップよりは高価である(通常のシロップは300gで500点程度).他方,品質保持期限を過ぎた当該シロップは,メイラード反応により透明から黄色く変色した廃シロップは処分されることになるが,そのまま直接廃棄できないため,結晶化させた上で焼却処分するといったプロセスが必要とし,処分に高額な費用を要しており,再資源化が必須となっている.本研究は,その使途として,六価クロムの無害化に成功したものの,どうやって社会実装するかが課題となる.最終年度は,それについても検討を加えたい. なお,進捗は順調であるものの,コロナ禍にあって,研究成果の発表が出来ていない.最終年度は,論文だけでなく,研究講演会やシンポジウムでも,積極的に発表していきたいと考えいる. 【研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等】 現時点では,特に存在しない.
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次年度使用額が生じた理由 |
講演発表会等への参加について,ほとんどがオンライン発表となったことから,旅費や交通費が発生しなかったため.
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