2015年に採択されたSDGsには,重金属等の有害な化学物質が流出することによって発生する土壌汚染や地下水汚染を減少させるという目標が含まれている.しかしながら,重金属による汚染は毎年発覚しており,汚染件数を減らすためには,重金属が環境中に流出する以前に処理を施す必要がある.カドミウムや銅,亜鉛といった多くの重金属は,アルカリ沈殿法や共沈法などの一般的な方法で処理される.一方で,六価クロムはアルカリ沈殿法ならびに共沈法での処理が困難であるため,特殊な方法で処理される.しかしながら,現行の処理方法は設備や使用薬剤に多大なコストを要するため,より安価な処理技術の開発が望まれている. そこで本研究では,低コストで入手可能な,廃シロップという食品廃棄物再資源化材料に着目し,これらの材料が持つ,六価クロムに対する無害化性能を検証することで,新規処理技術としての活用の可否を検討することを目的として無害化試験を実施した.なお,比較のために,廃シロップに含まれている主だった糖単体を用いて,同様の無害化試験を実施した. 試験の結果,廃シロップならびに廃シロップに含まれる一部の糖(知的財産の関係上,名称は伏せる.なお,現在,特許出願中)が,六価クロムの無害化に極めて有用であることが示された.廃シロップは食品廃棄物由来の材料であり安価で入手可能であるため,現行の処理技術が抱える高コストという課題を解決する新規処理技術としての利用が期待される. しかしながら,六価クロムによる汚染が実際に発生する現場では,六価クロム以外の物質が共存しており,多数の物質の共存が廃シロップならびに廃シロップに含まれる一部の糖による無害化能を低減させる等の影響が生じる可能性がある.そのため,今後は,こうした共存物質が廃シロップの無害化性能に与える影響について検証する必要がある.
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