研究課題/領域番号 |
20K04685
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
福林 良典 宮崎大学, 工学部, 准教授 (70812220)
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研究分担者 |
神山 惇 宮崎大学, 工学部, 助教 (90816266)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 充填材 / 引抜同時充填 / 土留部材 / 地盤変形 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
地下構造物の建設には,土留を伴う.建設後には不要となる土留めであるが,引抜により地盤変形が発生し近接構造物に悪影響を与えることが懸念され,残置されることが多い.一方,近年,資源の再利用と地下空間利用の必要性から,土留部材を引抜く必要性が高まっている.地盤変形を抑制し土留杭を引抜く工法として,全長を引抜後に充填材を投入する方法,杭周辺の地盤を改良後に引抜き,充填材を投入する方法,引抜きと同時に充填する工法が用いられる.本研究の目的は,これらの3通りの工法により土留部材を引抜いた際に,地盤の変形量を定量的に把握する手法を開発することである. 本研究では,新しく開発された土留部材引抜同時充填工法に着目する.この工法の地盤変形の抑制効果を立証することも視野に入れ,評価手法の確立を目指す.引抜時の地盤変形を抑制する効果が評価できれば,コストも鑑みつつ最適な引抜工法が採用され,残置された土留部材の撤去と再利用につながる.また,土留部材の残置が望ましくない箇所で(河川堤防や,将来的に埋設管敷設などで地下空間が利用される箇所),地中構造物への影響や引抜後の固化した充填材を含む地盤中の透水性の検討を行うことで,撤去が可能となる. 2020年度は,数値解析手法による土留部材引抜同時充填工法のモデル化の検討を行った.この検討には養生期間とともに強度発現が進む充填材の力学的特性を知る必要があることから,撹拌後の時間をパラメーターとしてポータブルベーンせん断試験装置を用いてベーンせん断抵抗を把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は当初の計画どおりに,数値解析手法による土留部材引抜同時充填工法のモデル化の検討を行うことができた.土水連成3次元弾塑性FEMコード「DBLEAVES(Kimura and Zhang, Soil and Foundation, 2000)」により再現解析(以下、FEM解析 )を開始した.そのためワークステーションを購入し計算実施体制を整えた.また,コードの導入と運用に際し,京都大学の開発者からガイダンスを受けた.地盤と構造物の相互作用の解析に有効な手法であり,この手法を杭の引抜きに適用させている.この検討には養生期間とともに強度発現が進む充填材の力学的特性を知る必要があることから,撹拌後の時間をパラメーターとしてポータブルベーンせん断試験装置を用いてベーンせん断抵抗を把握した. 現在モデル化の途中であるが,その再現性はこれまでの施工事例での計測値との比較し,検証する必要がある.この検証は21年度以降に行う予定である. 2020年度には,土留部材引抜同時充填工法の約370事例の施工条件と地盤変形に関する情報の精査を開始した.このまとめと数値解析結果を参照に,2021年度に実施予定の実施工現場の計測計画を立案する. 以上から,当初の研究計画に従い研究が進捗しており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
土留部材引抜同時充填工法の数値解析によるモデル化と,約370の施工事例の地盤情報と地盤変形に関するデータ分析をもとに,実現場での地盤変形計測を行う.施工事例の報告では,地盤情報や引抜土留めと地盤変形測定箇所の位置関係など,モデルの再現性を検討するための情報が十分でないことが多い.そこで,数値解析へのモデル化の際に必要となる情報を得て,引抜後の地盤変形や応力状態を解析上と実測を比較検討できるように,実物大実験または実施工現場でのデータ収集と計測を行う. 土留め背面の適切な位置に傾斜計,土圧計,ひずみ計,間隙水圧計を配置し,計測期間を決定する.計測は,全長を引抜後に充填材を投入する方法,杭周辺の地盤を改良後に引抜き,充填材を投入する方法,引抜きと同時に充填する工法のそれぞれについて実施する.施工の資機材や計測器設置の作業費用は,工法協会の協力を得る. 実物大実験または実測データをもとに,3通りの工法による杭の引抜時の,地盤変形の数値解析による予測手法を確立する.
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