地盤情報DBに適用する人工知能を用いた地層区分推定方法を確立することを目的し,地盤情報は,調査地点,深度,そこで現れる土質など偏り(情報バイアス)を持つため,BD群の特徴を踏まえた上で,地層区分推定のためのニューラルネットワーク(NN)の新しい全体誤差関数の考え方とその機械学習の方法を提案した。さらに機械学習において、過学習回避のためのL2正則化を適用するとともに,NNによる地層区分推定の適用性について調査した。 まず、直線的にボーリングデータ(BD)が存在する福岡県都市高速道路沿線を対象とした検討を行った。その結果、提案したD-LAYER NN法が最も良い地層区分推定を行うこと明らかにした。令和4年度は、福岡市天神・博多地区を対象とし、面的に分布するBDに対する検討を行った。その結果、前年度までと同様に、提案したD-LAYER NN(DLNN)法が最も良い地層区分推定を行うことを明らかにできた。さらに、モデル地盤を用いた機械学習の正解率の評価を、地盤情報の統計値により評価する方法を提案し、その有効性を示した。 以上の結果から、本研究課題を遂行することによって、得られた成果は以下のとおりである。 (1)全データ分け隔てなく学習時の判断材料とする従来のNN(ONN)法でも80%以上の正解率が得られたが,データを平均化して偏りを小さくし,推定位置に近いBDの情報ほど誤差が小さくなることを期待したDLNN法の方がより高い正解率となることが確かめられた。このことから,地盤情報の情報バイアスを考慮することが,より良い推定結果を得るためには必要である。 (2)提案手法が線上に分布する密なBDだけでなく、粗密が異なる面的に分布するBDでも適用可能であることを福岡市平野部地盤を対象として明らかにした。 (3)地盤情報の統計値に基づく地層区分推定結果の精度評価手法を提案しその有効性を示した。
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