研究課題/領域番号 |
20K04693
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研究機関 | 大阪府立大学工業高等専門学校 |
研究代表者 |
新納 格 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70198422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 締固め / 粘性土 / 無機水溶液 / 界面活性剤 / ベントナイト / カオリナイト / アロフェン |
研究実績の概要 |
粘土と珪砂の混合土に、有機と無機の水溶液およびこれらを混合した無機・有機ハイブリッドと一般に土質実験で使用される分散剤を添加し,動的締固め試験、一軸圧縮試験および膨潤量試験などの室内実験を行い、締固め密度を高める効果を検討した。混合土は粘土分としてNa型ベントナイト,Ca型ベントナイト,カオリナイトおよびアロフェンの4種類を乾燥質量で70%、これに珪砂7号を30%混合したものである。水溶液は有機としてアニオン性界面活性剤を濃度0.5質量%、無機は塩化ナトリウム,チオ硫酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを濃度0.1Mと0.3M,分散剤はヘキサメタりん酸ナトリウムを濃度20質量%以下とした。無機・有機ハイブリッドはアニオン性界面活性剤とチオ硫酸ナトリウムの混合水溶液とした。室内実験の結果、Na型ベントナイト混合土ではチオ硫酸ナトリウム水溶液の濃度0.3Mと無機・有機ハイブリッドで締固め密度を高める効果が確認された。その他の水溶液に明確な効果は確認できなかった。硫酸ナトリウム水溶液で効果を確認できなかった原因として、陽イオンとの結合性がチオ硫酸イオンと比べて高いため、土粒子表面付近の対イオン濃度が上昇したためと考察した。塩化ナトリウム水溶液の場合は、塩化物イオンがチオ硫酸イオンと比べて高分子(粘土はケイ酸塩族の粘土鉱物主体の無機高分子で、自然界ではこれに有機物高分子が加わった複雑な高分子複合体と考えることができる)を塩析する力が弱いためと思われる。Ca型ベントナイト混合土では、アニオン界面活性剤水溶液において締固め密度を高める効果が確認できた。層間イオンに界面活性剤の親水基が吸着し、単位層間に作用する電気的引力を弱めて膨潤量が増加して粘着力が低下した影響と考察した。カオリンナイトとアロフェンの混合土については、いずれの水溶液においても明確な締固め密度を高める効果は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに進んでいる。ただし、当初予想した実験結果とやや異なり、Na型ベントナイトはチオ硫酸ナトリウム水溶液が、Ca型ベントナイトではアニオン性界面活性剤が締固め密度を高める効果が高いことが判明するなど、粘土鉱物の種類で効果的な水溶液が異なることが判明した。そこで、無機のチオ硫酸ナトリウム水溶液と有機のアニオン性界面活性剤水溶液を混合した無機・有機ハイブリッド水溶液を作製し、Na型とCa型の両方のベントナイトで締固め密度を高める効果を発揮できるか否かを追加検討した。実験は完了していないが、ハイブリッド化した水溶液は、Na型とCa型の両方のベントナイトで効果的である結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
下記の内容を追加検討する。これ以外に変更はない。 Na型ベントナイト混合土では、チオ硫酸ナトリウム水溶液に締固め密度を高める効果が確認されたが、同じナトリウムイオンの硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムではその効果が確認できなかった、さらにCa型ベントナイト混合土ではアニオン界面活性剤水溶液とチオ硫酸ナトリウムとの無機・有機ハイブリッド水溶液に効果が確認されたが、他の無機水溶液には効果を確認できなかった、さらにカオリンナイトとアロフェンの混合土では検討した水溶液のいずれも効果を確認されなかったことなど、複雑な実験結果が得られている。これらの実験結果が生じた原因を考察するには、膨潤量の違いで与えられる単位層間の水分子の積層数の影響、ナトリウムイオンとカルシウムイオンの比較で与えられる陽イオンの電荷の大きさの影響、水溶液の濃度差で与えられる接触値定理で説明されるスタック間相互作用の影響、塩化物イオンと硫酸イオンの比較で与えられるホフマイスター系列で説明される高分子を塩析する力の影響、硫酸イオンとチオ硫酸イオンの比較で与えられるHSAB則で説明されるイオンの結合の安定性の影響などについて、締固め密度に与える影響に関する情報が必要である。そこで、当初計画に追加して、水溶液のイオン種類と濃度を変えて膨潤量試験と膨潤圧試験を行い、間接的ではあるが粘土分が多く混じる土の締固めメカニズムモデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積より、安く購入することができたため。
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