研究課題/領域番号 |
20K04694
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
荒牧 憲隆 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 准教授 (00299661)
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研究分担者 |
向谷 光彦 香川高等専門学校, 創造工学専攻, 教授 (10311094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土構造物補強技術 / 人工地盤材料 / 耐震性 / 耐浸食性 / 老朽化 / 風化 / 短繊維 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
ため池堤体などの土構造物において耐震および豪雨対策の総合的な強化が進められている。一方,地域によっては土構造物に力学的に不安定な土質材料が用いられることもあり,ため池堤体など歴史的に古くから供用されている土構造物では,材料の劣化に伴う老朽化が問題となっている。本研究は,材料と構造の両面からアプローチし,脆弱な土質材料を用いて高靱性を有する人工地盤材料を開発,これを用いて堤体盛土の表面部の部分的改良をすることによって,全体系の耐震性と耐浸食性を向上させる土構造物補強技術を確立することを目的としている。 令和2年度における研究計画において,耐震性と耐浸食性を向上させる高靱性を有する人工地盤材料の開発を目的とする。具体的には,耐震性と耐食性を併せ持つ土構造物築造のため,①土構造物の老朽化を想定し,風化などにより人工的に劣化させた土質材料の力学特性,②古紙を用いた繊維補強材料を混合したリサイクル資源を混合した高い靭性を有する人工地盤材料の開発を行った。 得られた知見から,三軸圧縮試験による人工的風化土の力学試験の結果,土の風化が進行していない場合,いずれの拘束圧でも,せん断初期に収縮傾向を示すものの,ひずみの発現とともに,膨張し正のダイレイタンシー特性を示す。人工的に風化を進行させた場合では,同じ材料であっても,最終的に膨張傾向は示さず,収縮傾向で負のダイレイタンシー特性を示し,風化により,軸ひずみ,体積ひずみの発現傾向が異なることが認められた。さらに,酸化の影響による強度特性の違いについても評価が可能であった。 次に,風化が進むと脆弱化する土質材料を用いて,古新聞繊維材を用いた人工地盤材料の力学特性を検討した。一軸圧縮試験および三軸圧縮試験の結果から,ある程度,締固めが不十分であっても,ダイレイタンシーは抑制され延性的な破壊モードを示し,強度もある程度確保されることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本校におけるコロナウィルス感染対策のため,遠隔授業の準備や,半年間の学生の校内立ち入り禁止等により,研究時間の確保や研究補助者の支援を受けることが困難であったため,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い,研究を推進していく。 古新聞繊維材を有効利用することで,脆弱な土質材料盤への補強効果があることは認められた。次年度においても,耐震性と耐浸食性を有する高靱性人工地盤材料を開発するにあたって,配合条件の検討やリサイクル繊維材の選定を行うことにより,より高度化された材料開発を行う予定である。 さらに,令和3年度において,部分補強による堤体盛土の耐震性向上について検討する。既往の研究成果を踏まえ,堤体の部分補強構造に関して,堤体の部分改良形態については,種々の基本パターンを設定する。ここでの,旧堤体の盛土材には,風化度の異なる土質材料を用いることによって,老朽化した堤体を再現する。土構造物の部分補強盛土について,その耐震性能を評価することを目的として,補強領域と旧堤体部となる盛土材の風化の違いによって生じる崩壊形態を模型振動台実験により評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は,本校におけるコロナウィルス感染対策のため,研究時間の確保や研究補助者の支援を受けることが困難であったため,謝金などへの支出が抑えられた。また,学会での発表もオンラインが中心で,旅費の支出が抑制されたため,予算を消化できていない。 令和3年度において,本年度分として請求した助成金と合わせ,申請書に示しているように助成金を使用する。まず,強度が比較的高い改良土の実験を行うことから,所有する荷重計より荷重計容量が大きい三軸試験用荷重計を購入する。消耗品は,実験に必要な三軸試験用メンブレン,同ろ紙,同配管部品,土質実験および振動台実験消耗品は,各種実験の必需品である。振動台実験用加速度計,間隙水圧計および変位計は,更新が必要な計測器であり,また,模型実験において,複数の観測点で計測することから,それぞれ複数台購入する予定である。裁断機は,古紙やプラスチックの裁断が必要となり購入する。 旅費に関しては,成果発表と研究調査を目的に支出を計画している。さらに,謝金は本校学生の実験補助としての助成金の使用を考えている。成果を学術誌へ投稿する費用(論文別刷)も 2 年目以降に計上している。論文投稿時の英文校閲の費用も計上している。その他には,実験終了後の繊維混合土の実験廃棄物処理費が必要となり,計上している。
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