研究課題/領域番号 |
20K04701
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
田中 規夫 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80323377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流水抵抗 / 樹木破壊 / 浮遊物トラップ / 流木ダム |
研究実績の概要 |
2019年の令和元年東日本台風で破堤被害の発生した入間川流域を含む荒川全体を対象流域として、出水後の河道状況(特に植生動態)の調査と、調査を踏まえた研究対象の絞り込みを行った。特に,樹冠高と河川水位の関係,植生構造(樹種、密度)と浮遊物捕捉状況などに応じて,鉛直方向の流速分布や洪水時の抵抗変化が局所的水位に与える影響を調査した。鉛直構造に注目した植生分類としては、樹木(HWLより樹冠高が上,下を,高木,低木に分類),多年生高茎草本(ヨシ,オギ,ツルヨシなど)など流速の鉛直分布に大きく影響を与える植物の分布をGISデータ(水辺の国勢調査データ(植生)と現地観測により作成済み)により解析し,植生タイプを類型化した。低木の樹冠高と樹冠幅の関係などGISデータでは未取得のものについて,UAVによる写真取得と画像解析(密度等),樹冠高の現地計測を代表的樹木について行ない,水理実験の植生模型条件を分類した。洪水前後の草本動態調査としては、都幾川・越辺川合流点と熊谷付近の扇状地河道においてUAVの空撮と画像処理により,草本・木本の動態(洪水時流失を含む)を洪水期の前後で把握した。現地調査を踏まえ、延長15mの可変勾配開水路に,鉛直方向分布をもつ植生(実樹木の枝を用いて調整)を設置し,水面形の計測と電磁流速計による計測を行った。また,捕捉物の形を樹林帯の前面部でダムのように捕捉するI型、単一の樹木で樹木周辺に馬蹄形に捕捉するU型、それらの組み合わせであるIU型に分類し、捕捉物の量を変化させた計測も行った。I型は局所的な水位上昇は大きいものの、樹林帯全体における水位上昇はU型のほうがはるかに大きく、U型とIU型の差は大きくないことを明らかにするなど、水位に応じた抵抗特性を明らかにした。都幾川の事例ではパッチ状樹林帯が堤防沿いの水位に及ぼす影響を堤防とのギャップに注目して解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル化に必要な情報を現地調査において取得し、それに基づき水理模型実験をおこなっている。また、現地調査における情報は今後開発する数値モデルにおいて、浮遊物トラップに関するモデル化に必要な情報となる。水理模型実験データは数値モデルの検証材料、痕跡データや樹木周辺の河床変動は実スケール現象におけるモデルの検証材料となりうる。1年目としては、ほぼ予定通りの研究成果が得られている。樹林帯パッチの検討に関しては国際学術雑誌への投稿準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、1年目の研究成果を数値モデルへ取り込み、検証を行い、その上で移動床への影響も含むものに発展させることである。移動床への拡張に際しては、1)浮遊物トラップによって生じる流れ構造の変化による洗掘領域の変化の実験的調査、2)植生の平面分布(合流点との位置関係も含む)と鉛直構造が土砂堆積現象や河岸侵食・低水路側の土砂流送に与える影響、の観点から水理実験を行う。また、洪水時の破壊現象を考慮した実験:倒伏・流失した樹木モデルが河床変動に与える影響を明らかにするため,倒伏・流失現象をモデル化し,移動床実験を行う。 次に、浮遊物捕捉効果・遮蔽効果による抵抗変化を考慮可能なモデルを開発する。特に、浮遊物捕捉による抵抗変化特性や,植生の鉛直構造に応じた抵抗変化を明らかにし,解析モデルに組み込むことで、2年目の研究推進を図る。
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