研究実績の概要 |
本研究は,VOF法を円柱群周りの流れにあてはめ,円柱より細かい格子で解析することにより,有限幅円柱群周りの乱流構造を詳細に明らかにすること,樹木の樹冠高が流れの三次元構造に与える影響を解明すること,破壊された草本木本を捕捉した際に樹林帯周辺に生じる洗掘現象を明らかにすること,を目的として行ったものである. 有限幅樹林帯の樹冠高さ変化に関しては,1)樹林帯背後のエネルギー,流体力の減少と,2)樹林帯背後とギャップ領域の流速差に着目して計算を行った.樹冠高比(=樹冠高さ/樹木高さ)を0.2から0.5の間,アスペクト比は1(FM-1),1.5(FM-2)の2種類を行い,FM-2で樹冠高が低い場合,樹林帯による堰上げ背水はFM-1よりはるかに大きく,最大のエネルギー損失は67%,樹林背後の流体力は50-59%まで低下する一方で,ギャップ領域に大きな流速増加をもたらした.FM-1で樹冠高が低い場合は,下流並びにギャップ領域に大きな流速変化をもたらさないことを示した.河道内樹林の管理として、樹木密度だけではなくパッチ形状と樹冠高影響も考慮する必要性を示した. 次に,草本・木本などの浮遊物捕捉が樹林帯周辺の洗掘現象に与える影響を評価した.有限幅樹林帯を側壁付近に配置し,その角度と側壁までの隙間の距離を変化させて,捕捉の有無(捕捉する形をI型,U型の2種類)による洗掘深や洗掘領域の変化をフルード数0.7で調べた.側壁沿いに最大洗掘深があらわれるのは,捕捉がない場合には流れに対する角度が90~120度であり,川幅で無次元化したギャップが0.014であった.しかしI型、U型で捕捉した場合には,ギャップがそれぞれ0.014-0.25、0.014-0.375の間で洗掘量がさらに増加した.このように,洪水時に流失し,下流の樹林帯で浮遊物を捕捉する現象が生じた場合の有限幅樹林帯の危険性を定量的に示した.
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