初年度,2年目の研究で,水面流速を比較的高精度に計測できる浮子型の観測機器を開発した。一方で河川を含む風が吹く開水路流れでは,水面流速が水面下に比べて極端に増大あるいは減少する.また強風の場合,風波が発生する.このため無風時の流速分布式が適用できず,水面流速を用いる正確な流量評価が困難となる.そこで最終年度では風洞水路を使って水理計測を行った.2つのカメラを用いた水面と流れの同時計測を行い,風波による開水路流れの流れ特性の変化を考察した.また,浮子の流下実験を行い,風波の影響下における浮子観測や更正係数への風波の影響を明らかにした. 水面と流れの同時計測法より実測した水面が変動する場での水面流速を得ることができ,順風下では風波発生時に大きく増加し,逆風下では風速が大きくなると大きく減少する傾向があることが分かった.また,水深平均流速と水面流速の比を算定し,水面流速から流量を評価する際,風が存在する場合には,従来法では大きな誤差を生むことが明らかになった. 一方で,風波の発達下では浮子軌道が乱れ直進性を保つのが難しくなる傾向があり,風波の影響で浮子観測が難しくなることが分かった.PIV計測で得られた水面流速と浮子流速の比較を行った.順風条件では浮子流速がPIV水面流速よりも大きくなること,特に風波が発達しているケースで両者の差が顕著になること,短浮子の方がPIV水面流速を過大評価する傾向にあることが明らかになった.また,逆風条件でも風速が大きいケースで浮子流速とPIV水面流速の乖離が大きくなることが分かった. PIV計測で得られた水深平均流速と浮子流速から更正係数を計算した.風速の変化に伴う更正係数の変化を示し,風波場での河川流量観測における重要な知見を得た.
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