研究課題/領域番号 |
20K04706
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中谷 加奈 京都大学, 農学研究科, 助教 (80613801)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土石流 / 規模予測 / 三次元 / 集水領域 / 指標化 |
研究実績の概要 |
本研究は、土石流規模の予測に向けて、山体内の水貯留や渓流を越える水移動も考慮した集水領域の指標化を提案するとともに、集水領域に貯留された水が短時間で流出する土石流の流量ピークを推定できる解析手法を提案することを目的とする。2020年度は、土石流の水の量に着目して集水領域を検討するとともに、土石流規模に影響する要因を明らかにすることを目的とした。2014年8月に広島市安佐南区で発生した18渓流の土石流を対象として、降雨量や土石流規模、地形や地質の情報収集・データ整理を行い、GISを用いた検討、流域への降雨由来の水で災害と同程度の土砂流出が発生するかを検証する土石流シミュレーションを実施した。結果から、流域面積を集水領域として降雨量から算出した水の量では全ての土砂が流出しない渓流が多く、水が不足すること示された。土砂が多く残存して水が不足する渓流は、花崗岩で構成される割合が多く、地質が土石流を構成する水の量や起源に影響することが推測された。流域面積0.1km2以下の小さい渓流や、流域よりも標高の高い上流に別流域が存在する渓流も、土砂残存率が多いことが示された。水が十分な渓流と不足した渓流は、隣り合う、または山頂を挟んで反対側に位置するものが見られ、隣接渓流からの水移動や、山体に貯留された水の供給が影響して、流域への降雨以上の水供給により土砂移動が発生したことが推測された。さらに、18渓流について流域の末端より標高が高い部分をGISで抽出して、流域に対する三次元的な山体の体積を求めた。地形指標の流域や山体体積は、それぞれが土石流規模を示す流出土砂量に影響する。このため、流出土砂量を地形指標で除した単位面積(体積)あたりの土砂量として検討した結果、山体の体積と単位体積あたりの土砂量は、流域面積を指標とした場合よりも相関がよく、土石流規模を表す指標となりうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナウィルスによる影響で、現地調査や情報収集のための出張が当初の計画よりも大幅に少なくなり、本課題の遂行に必要な2018年の土石流事例のデータが不足した。そこで、既に災害情報、災害前後のDEMや実際の流出土砂量、降雨量、現地調査や測量結果が十分に揃った2014年広島災害を対象として、データ整理、GISによる分析、土石流シミュレーションによる詳細な検討を実施した。結果から、地質が土石流の水の量や規模に大きく影響することや、流域面積の小さな渓流や上流に別渓流が存在する流域で水が不足することを示した。また、水が十分な渓流と不足する渓流は、隣接して存在したり山頂を挟んで反対側に位置するものが見られて、隣接渓流からの水移動や、山体に貯留された水の供給が影響して、流域への降雨以上の水供給により土砂移動が発生したことが推測された。土石流規模に影響する地形指標として、流域に対する三次元的な山体の体積を用いると、流域面積を指標とした場合と比較して、単位体積辺りの流出土砂量の対応がよく、山体の体積は土石流規模を表す指標となりうることを示した。得られた知見を基に、2018年の土石流事例は入手済の一部のデータを用いて検討を進めて、今後実施すべき現地調査や情報収集が必要な箇所、情報の抽出までを実施した。また、土石流の急激なピーク流量を表現するためのタンクモデルをベースとした解析方法について、試行的な手法を提案して、観測や雨量データが揃った土石流事例について検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得られた知見を基にして、2018年に広島で発生した土石流事例を対象とした検討を進める。2020年度に抽出した現地調査や情報収集が必要な箇所について、調査を実施して詳細なデータや情報を得る。2018年に発生した災害は、2014年と比較して広範囲であることから、地形・地質的な差だけでなく降雨分布による差についても着目して、データ整理、GISによる分析、土石流シミュレーションによるを実施する。土石流規模を表す地形指標について、流域面積、流域を三次元化した山体の体積だけでなく、隣接渓流を考慮した二次元的や三次元的な集水領域の検討を進める。さらに、土石流の急激なピーク流量を表現するための、タンクモデルをベースとした解析方法について検討を進める。2020年度に提案した手法について、土石流発生タイミングを適切に表現して、且つ土石流規模を表現できる、各種パラメータの設定方法を検討する。土石流発生の閾値となる降雨量や貯留高は、対象地により大きく異なることが推測されるが、まず観測や実測のデータが十分揃った事例での検討や、実際の土石流発生事例との検証が必要である。比較的土石流のデータが揃った複数のサイトについて情報収集を実施して検証を進めた後、得られた知見を2014年や2018年の広島の土石流事例について適用した場合にどのような対応を示すか確認して、広島に適用する際のパラメータ設定方法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスによる影響で、当初の計画よりも2020年度に予定していた調査、情報収集のための出張が大幅に少なくなったこと、ならびに学生アルバイトに依頼を予定していた調査補助、データ整理補助もなくなったことにより次年度使用額が発生した。2021年度には、これまでの傾向も踏まえて実施可能な期間に、集中的・効率的に調査ならびにアルバイトによる作業の実施を依頼して、研究を実施する。
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