研究実績の概要 |
波浪による沿岸防災においてその実態を把握し,防災の指針を策定するには過去の波浪データを活用する必要がある。その代表的なものが再解析データである。これは波浪推算モデルによって波浪追算を行い,人工衛星データなどで同化したものである。それを活用するにあたってまずは気象庁による沿岸波浪解析データとERA5波浪再解析データをGPSブイ波浪データと比較検証を行った。これらの3者のデータは概ね一致した。また気象庁による沿岸波浪解析データによる波高はERA5再解析波高に比べて精度は良かった。周期についてはERA5再解析周期の方が気象庁沿岸波浪解析データによる周期よりもGPSブイデータと一致した。ERA5再解析波高は波高が高くなるにつれて過小推定する傾向が見られた。これはERA5データの前のバージョンであるERA Interim再解析波高データでも見られた傾向と同じである。次にERA5再解析波高について吹送距離が短い場合(陸から風が吹く場合)と長い場合(沖から風が吹く場合)についてその精度に違いについて調べた。各々のGPSブイについて吹送距離が短い場合と長い場合の組ごとにテーラー図に誤差指標をプロットして解析した。その結果, テーラー図上で吹送距離が短い場合の組と長い場合の組と各々でクラスターとなっていた。これは明らかにERA5再解析波高の精度が吹送距離が短い場合において低下することを示している。この理由は波浪追算のためのERA5格子では海岸線を高分解能で解像していないため,吹送距離が過大評価されているからである。ERA5再解析周期についても同様な傾向が見られた。2020年度はこの成果を論文としては発表した。
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