研究実績の概要 |
波浪推算の結果を検証にはブイによる波浪データを使用する。しかしブイを外洋や流れが速いところに係留するのは不可能である。漂流ブイは, 陸地から遠く離れた外洋や流れの強い海域で波浪データ収集が可能である。しかし漂流ブイによる波浪データの検証は少ない。そこで漂流ブイ波浪データ, ERA5波浪データ, 係留されたGPSブイ波浪データを比較した。日本沿岸付近の2009年から2018年までのデータを使用した。漂流ブイで観測された波浪パラメータと係留GPSブイで観測された波浪パラメータは合致した。係留GPSブイで観測された波浪パラメータを基準データとした漂流ブイ波浪パラメータの精度は, ERA5波浪パラメータの精度よりも高い。特に海流が速いところでは,ERA5の波高の精度が低くなる傾向がある.一方, 漂流ブイ観測波高と係留GPSブイ観測波高の一致は, 海流が速いところでも一致した。これより, 漂流ブイの波浪データは, 波浪モデル研究のための基準データとして利用できることが確認された。次に日本海における風の場の経年変動と波高の空間変動との関係を調べた。そこで, 月平均のERA5再解析データを用いて, 日本海の波高の時空間変動と風の場の関係を検討した。まず, ERA5の波高が係留ブイの波高と一致することを示した。続いて経験的直交関数(EOF)および自己組織化マップ(SOM)解析により, 波高と風の偏差分布の関係を調べた。EOFの第1モードは日本海中部で振動するモードであり, 第2モードは南北に振動するモードである。各季節において, 波高偏差EOFのモードはいくつかの気候指数と有意な相関がある。SOMにはEOF解析の第1モード, 第2モードと一致するパターンが見られた。日本海中部では, 波高偏差が増加するパターンの頻度が近年増加している。これは波高偏差EOF第1モードの長期トレンドと一致する。
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今後の研究の推進方策 |
波浪モデル推算に関する研究がおくれているので、それを中心に行う。波浪推算、特に沿岸海域における波浪推算には高空間分解能の海上風データが必要である。再解析海上風データを使用する場合,それらを空間補間して使用する。しかしその場合,移動する台風や低気圧などの風を適切に時間補間できない。研究代表者はそれを解決する手法を考案した。しかしその手法を沿岸域に適用することはできない。そこでこの手法を沿岸域に適用できるように改良する。その効果を波浪推算モデルを用いて検証する。 令和4年度はまず東シナ海の波浪変動についてその特徴を整理して論文にまとめる。次に海上風データを沿岸域で補正する手法を開発し,その検証を行う。 令和5年度は新たに推定した海上風データに応じた波浪推算モデルを構築する。そのモデルの検証を現場観測データとの比較によって行う。結果を論文にまとめる。
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