研究課題/領域番号 |
20K04709
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
新谷 哲也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (80281244)
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研究分担者 |
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30448584)
宮本 仁志 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50283867)
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 赤外線 / ドローン / 貯水池 / 水温変化 / 衛星画像 |
研究実績の概要 |
本研究は湖沼・貯水池の水温分布の空間的な把握を目的に進められている.今年度は.東京都が管轄する小河内貯水池において赤外線搭載ドローンと小型水温計を用いた現地観測を行った.貯水池では,視界の開けたダム堤体前と上流側の河川流入部を調査対象区域とした.沿岸域や湖の水面で行われるドローン撮影では,撮影された個々の画像内に画像連結に利用される特徴点の少ないことが問題点として挙げらる.そこで,今年度は,ドローンの進行方向や緯度経度情報から撮影範囲を特定し,画像を合成するアルゴリズムの開発を行った.その結果,特徴点マッチング法では困難であった水面上の画像合成が一定の精度で可能となった.ドローン画像から推定した水面水温と貯水池の水面に設置した水温計の測定結果を比較したところ良好な一致を示し,ドローンによる温度推定が可能であることが明らかとなった.また,上流部における観測では,植物プランクトンの高濃度で分布すると思われる水面付近では,空間的な温度変化が観測されるなど,可視光だけではなく温度分布からの水質把握の可能性も明らかとなった. 一方,ドローンと同様に間接的な空間的な水温変化の把握方法である衛星画像による温度推定も同時に行った.衛星データにはLandsat8の画像を用いた.衛星画像は2週間に一度程度の撮影間隔であるが,水域全体の水温分布を把握することができる.衛星画像から推定した温度は,東京都で定期的に収集された観測データと合理的な一致を確認することができた.衛星画像から推定された温度分布から,季節的な水温変化,流入河川の影響,上流から下流に向かって変化する水温などを定量的に確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスの蔓延により現地観測が制限されたものの,実際に貯水池で観測を実施することができた.また,合成が困難な水面画像に対して,課題はまだ残るものの自動的な合成を可能とした.赤外線ドローンによって貯水池水面の水温を測定するという目標は十分に達成することができた.合成された水面上の水平水温分布については,未だノイズや水面からの不要な反射が存在し,ノイズの消去や撮影方法,撮影時間帯の調整などが必要であると考えている.しかしながら,撮影・画像処理方法は十分に構築することができたため,研究は順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であるが.まずはより正確に位置が特定できるRTK搭載の赤外線ドローンを購入し,画像合成の精度を高める予定である.ドローンが複数台になることで,頻度の高い観測が期待できる.また,進捗状況でも述べたが,赤外線画像にはさまざまなノイズが入ることがわかった.そのため,ノイズを低減・除去するための画像処理アルゴリズムを改良する予定である.また,数値流動モデルと観測結果を組み合わせることで,貯水池の水平水温分布が引き起こす流動,及び結果として引き起こされる物質輸送に関して詳細に検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も観測ができる見込みが少なかったため,ドローンの購入を次年度に変更した.また,本来であれば関西の貯水池への観測,打ち合わせなどを予定していたが,ほとんど実行することができず,ドローン購入費,旅費を中心に次年度への繰越とした.
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