研究課題/領域番号 |
20K04710
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
遠藤 徹 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00527773)
|
研究分担者 |
中下 慎也 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (90613034)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 海岸堆積物 / 炭素貯留 / 残存性有機炭素 / 無機炭素 / 大阪湾沿岸部 |
研究実績の概要 |
温室効果ガスの削減策として、沿岸域における炭素貯留効果の解明と定量化が望まれている。本研究は、国内に広く分布する都市内湾の沿岸部における炭素貯留効果を明らかにするため、様々な海岸線形状を有する大阪湾をモデルケースとして、堆積物中の炭素成分のうち難分解性有機物と貝殻などの無機炭素を分画する分析手法を確立するとともに、大阪湾の干潟や砂浜、磯場などの各種浅海域および港湾海域といった環境特性の異なる海岸を対象に調査を実施して炭素形態の分布特性を把握する。さらに、海岸ごとの底質性状と炭素貯留効果を類型化することで大阪湾の海岸線における炭素貯留量を推定することを目的とする。 2020年度は、大阪湾全域を対象に干潟、砂浜、港湾海域および漁港の4海域で堆積物を採取し、堆積物中の炭素形態を分画して海岸域に貯留される炭素量を定量化するとともに大阪湾の海岸線全域における炭素貯留量を評価した。まず、100日間の生分解試験で分画した残存性有機炭素と熱処理分析で分画した無機炭素の合計を炭素貯留量と定義し、港湾海域や漁港の炭素貯留量が干潟や砂浜に比べて約4倍程度多いことを明らかにした。また、炭素貯留量に占める無機炭素の割合は港湾海域で約6割を占めていたのに対し、漁港では3割程度と無機炭素の割合が少なく、直立護岸でも海水面の利用形態により貯留特性が異なることを明らかにした。さらに、大阪湾全域の海岸線形状に基づいて炭素貯留量を試算した結果、堆積物の10cm層内に約78万トンの炭素を貯留していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスの感染拡大防止のため実施計画の変更を余儀なくされたが、収集したデータを基に2年目に実施予定であった大阪湾沿岸部のカーゾンストックの試算を実施した。計画変更はあったものの全体を通した進捗状況としてはおおむね計画通りであると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施予定であったCHNコーダによる堆積物中の難分解性有機物と無機炭素の分画手法の精度検証を実施する。一方で、2021年度もコロナウイルスの収束が見通せない状況であること、また、2020年度に沿岸部のカーボンストック量の試算ができたため、大阪湾内全域で採取していた底質サンプルで炭素形態の分画を実施し、大阪湾の沿岸部のみでなく大阪湾全域における炭素貯留量の分布特性について整理する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大防止のため、現地調査の規模を縮小したり、国内外の出張ができなかったため旅費が予定よりも余った。2021年度は2020年度に度実施できなかった調査と分析に伴う国内出張に充てるとともに、コロナウイルスの収束が見通せない状況であるため、データ解析による分析を充実するための予算とした。
|