研究課題/領域番号 |
20K04712
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
朝岡 良浩 日本大学, 工学部, 准教授 (00758625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 氷河融解 / 衛星観測 / 後方散乱係数 / 正規化植生指標 / ボリビア多民族国 |
研究実績の概要 |
熱帯氷河が後退した跡地の多くには湿地や氷河湖が形成されている。本研究は、湿地・氷河湖の水文学的機能を解明し、流域水循環および水資源に及ぼす影響の定量評価を目的とする。具体的には、水文・気象モニタリングと複数リモートセンシングの融合による湿地の氾濫メカニズムの解明、湿地・氷河湖の水収支の算出に取り組む。本研究で得た湿地・氷河湖の水文学的機能に関する学術的知見を氷河融解・流出モデルに組み込み、水資源量推定の高度化を図り、湿地・氷河湖の水文学的機能が流域水循環や水資源量に及ぼす影響を評価する。 人工衛星のマイクロ波センサのデータは雲の影響を受けにくく、光学センサと比較すると、高頻度のモニタリングが可能という利点がある。令和2年度に人工衛星(Sentinel-1)のマイクロ波(Cバンド)センサのデータから後方散乱係数を算出して、湿地湛水域の抽出方法を検討した。令和3年度は湿地を抽出する後方散乱係数の閾値について検討した。このため、Geoeye-1衛星の光学センサの高分解能画像を用いて湿地湛水域の抽出を試みた。正規化植生指標(NDVI)を算出し、Otsu法を用いてNDVI画像を二値化して、湿地湛水域のグランドトゥルースデータとした。これにより、マイクロ波の後方散乱係数の閾値を決定できることを示した。本研究の手法を複数の時期に適用して、閾値の妥当性を検証する必要がある。氷河湖の抽出に関しても、高分解能の人工衛星画像からトゥルーカラー画像を作成し、氷河湖マップを作成した。 水文・気象モニタリングに関しては昨年度に引き続きデータを蓄積した。また、ボリビア多民族国に渡航して、湿地・氷河湖の現地観測を予定していたが、COVID-19感染拡大の状況を鑑み次年度に延期した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響でボリビア多民族国の湿地・氷河湖を対象とした現地調査を実施できていないが、相手国のカンターパートの協力によって水文・気象観測を継続している。湿地湛水域と氷河湖の抽出に関しては複数の人工衛星(Sentinel-1、Landsat-8、Geoeye-1)のデータを用いてマップ化の目途がついた。以上より、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度までに作成した湿地・氷河湖のデータを用いて湿地・氷河湖の貯水量を推定する。さらに、氷河融解・流出モデルに湿地・氷河湖の貯水機能を組み込み、湿地・氷河湖が水循環および水資源に及ぼす影響を評価する。最終的にこれらの成果を取りまとめて論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染防止のためボリビア国で予定していた湿地・氷河湖の現地調査を延期した。これに伴い旅費、現地調査の費用を次年度に繰り越す。渡航は8月を計画しているが、COVID-19の状況を踏まえて渡航するかどうか判断する。渡航しない場合、これらの予算を湿地・氷河湖の解析のための衛星データ購入に使用する。
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