2022年度はSentinel-1衛星から得られるマイクロ波の後方散乱係数の画像とWorldView衛星の高解像度画像(空間分解能2m)を組み合わせて氷河下流の湿地を抽出する手法について検討した。まず、WorldViewの画像から作成した正規化植生指数と正規化水指数のデータを用いて流域の土地被覆分類を行い、非氷河域を水域、水域と植生の混在、植生域、土壌域の4種類に分類した。土地被覆分類と後方散乱係数の分布を比較したところ、後方散乱係数-10dB付近を上回ると水域の占有率が50%を超えることを確認した。この結果はWorldViewの2時期(2015年7月、2016年5月)の画像で概ね共通していたため、湿地を抽出する後方散乱係数の閾値を-10dBに設定した。Sentinel-1衛星の後方散乱係数の分布は概ね月単位で整備されており、後方散乱係数の閾値を用いて対象地域における湿地の変動を月単位で示すことができた。湿地面積の月変動は概ね河川水位と整合的であり、さらに各流域の湿地面積はそれぞれの氷河面積に対応していることから、湿地の抽出は概ね妥当性のあるものと判断した。 次にLandsat衛星から得られる正規化積雪指数を用いて氷河域の抽出を行い、昨年度までの解析期間を拡大して長期的な氷河変動の解析に取り組み、一部の氷河では後退が収束していることを確認した。さらにWorldView衛星のトゥルーカラー画像から氷河湖のデータを作成し、氷河・湿地のデータと組み合わせて、流域全体の土地被覆分類を整備した。
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