研究課題/領域番号 |
20K04722
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 潔司 京都大学, 経営管理研究部, 共同研究講座教員 (50115846)
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研究分担者 |
大西 正光 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10402968)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域プラットフォーム / 制度設計 / 効果測定 / アセットマネジメント / シェアリングエコノミー |
研究実績の概要 |
本研究では、複数の自治体が公共施設やインフラなどの地域アセットを包括して、1つの特別目的会社(SPC)包括的にアセットマネジメントを実施する「地域プラットフォーム」という仕組みを制度設計するための知見を導くことを目的としている。地域プラットフォームの仕組みが、どのような社会的環境においても機能するという保証はない。 初年度の令和2年度では、地域プラットフォームを組成するための計画、設計論に関する理論的検討と設計に際して必要となる要因の体系化を実施した。このような理論研究を効果的に実施するために、具体的に大阪府高石市、奈良県橿原市で地域プラットフォーム人材養成プログラムを、日本アセットマネジメント協会の協力の下で実施した。 このような実践的研究を通じて、1) プラットフォームが業務発注を集約することにより、自治体全体における固定費用を節約できる効果、2) 複数の自治体の業務を集約しポートフォリオとすることによって毎年度の業務量のバラツキを抑制できる平準化効果, 3)公的組織よりも民間企業体の方が柔軟に資金調達できることによる資金調達費用の削減効果を考慮したVFM発現モデルを定式化した。 小さな規模の自治体が比較的多く存在するようなエリアでは、固定費用の節約によるVFM向上が得られやすいことが分かった。また、毎年度の業務量のバラツキ抑制による平準化効果は、プラットフォームに参画する自治体の間で共通して生じるシステムリスクが小さい方がVFMの向上に資することが分かった。システムリスクの軽減は、研究代表者の小林がすでに提唱している「複数インフラの修繕タイミングの非同期レジーム」を通じて可能であり、修繕タイミングの非同期政策とパッケージとして、プラットフォームを導入すれば効果が高いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、複数の自治体が公共施設やインフラなどの地域アセットを包括して、1つの特別目的会社(SPC)包括的にアセットマネジメントを実施する「地域プラットフォーム」という仕組みを制度設計するための知見を導くことを目的としている。地域プラットフォームの仕組みが、どのような社会的環境においても機能するという保証はない。 初年度の令和2年度では、どのような地域に地域プラットフォームを導入すれば良いのかを定性的に知るため、地域プラットフォームの導入により、アセットマネジメントのVFM(Value for Money)の向上がもたらされるような地域条件を理論的に明らかにすることを目的としていた。 研究実績の概要で述べたように、研究計画においてプラットフォームの導入が適した地域として、比較的小さな自治体が集まっているエリアであること、修繕タイミングが比較的同期的ではないことという条件を挙げていたが、コロナ禍の下にも関わらず2つの地域を対象として実践的な社会実験を通じていくつかの具体的な示唆を得たことから、「当初の計画以上に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、令和3年度には、地域プラットフォームの制度設計の問題に取り組む。理論的な地域プラットフォームの計画・設計に関する理論的研究を進化させるとともに、令和3年度には、新たに奈良県田原本町、京都府木津川市で、実践的な社会実験を実施し、地域プラットフォームの計画・設計論の体系化を図りたいと考える。以上の研究成果は、学術論文として発表することとしているが、併せて地域アセットマネジメントのプラットフォーム論に関する著書を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の状況下、予定していた会議・研究会が延期およびオンラインに切り替わったため
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