研究課題/領域番号 |
20K04725
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
杉田 暁 中部大学, 中部高等学術研究所, 准教授 (20650708)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドローン・UAV / RTK‐GNSS / SfM/MVS / 高解像度リモートセンシング / 地理情報システム(GIS) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最近実用化された、安価かつきわめて小型・軽量な多周波・多システム対応のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と、RTK(Real Time Kinematic)測位技術、ドローン技術を統合して運用する方法論を構築することにより、ドローンの位置情報と空撮写真の付帯位置情報を高精度化し、写真と地図の統合を高精度化することである。2020年度は、一般的なカメラ搭載小型ドローン(例:DJI社製Phantomシリーズ、Mavicシリーズ等)を用いた、GCP(Ground Control Point)を使わないSfM/MVS(Structure from Motion/Malti View Stereo)による写真地図の高精度化、ならびに我々の開発した災害初期段階の情報収集・管理のために、SfM/MVS技術を用いることなく、迅速かつ簡単に写真と地図を統合するプラットフォーム「UAV(Unmanned Aerial Vehicle)斜め写真ブラウザ」による写真と地図の統合の高精度化のための基盤技術開発と初期的な精度検証を行った。これらのドローンは、学術研究においても最も利用されているドローンであり、その空撮写真には付帯情報として位置情報が記録されるため、写真地図の作成にも多く用いられており、UAV斜め写真ブラウザでも標準のドローンとして採用している。精度検証においては、RTK‐GNSSを搭載しないドローンによる写真と地図の統合の精度が水平に数メートルから十数メートル、垂直に数十メートルであったのに比し、本研究の方法では数十センチメートルから数メートル程度に低減できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RTK‐GNSSをドローンに搭載する方法により、飛行中のドローンの位置情報は得られるが、写真を撮影した座標を推定することはできない。そこで、ドローンの飛行制御装置による飛行ログと写真の付帯情報、RTKのログを突合し、写真を撮影した座標の推定を行い、写真の付帯位置情報として反映するプログラムを開発した。また、その推定のため、飛行の方法にも工夫を行った。飛行中、写真撮影の前後でホバリング静止を挟むことにより、写真撮影のタイミングを判別し易くするとともに、撮影タイミング推定誤差の、座標の誤差への伝搬の低減を図る方法を開発した。また、空撮の高効率化を図るため、新開発のACP(Aerial Control Photo)法を導入した。ACP法では、(1)一部の高精度な位置情報を持った写真の撮影のための飛行と、(2)SfM/MVS処理をする際に補完的に用いる写真の撮影のための飛行を分けて行う。(2)の補完的に用いる写真を撮影する飛行では、ドローンにGNSS受信機を搭載する必要がなく、重量増の影響による飛行への影響もない。また、写真撮影のタイミングでホバリング静止を行うのは、高精度な位置情報を持った一部の写真を撮影する(1)の飛行のみなので、空撮の領域が広ければ広いほど、結果的にその効率が向上する。さらに、精度について、(A)本研究の方法で作成した写真地図と、(B)デフォルトの状態のドローンで撮影した写真を用いて作成した写真地図、(C)GCPを用いて作成した写真地図について、精度の相対的な評価を行いその初期的な精度検証を行った。その結果、(B)では、水平に数メートルから十数メートル、垂直に数十メートルあった誤差が、(A)では数十センチメートルから数メートル程度に低減できることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、まず、ACP法を導入するにあたり、高精度な位置情報を持った写真が処理する写真全体の中でどの程度の割合必要か、また空撮領域全体の中で、その位置はどのあたりが適切か、等の検証を行う。次に、精度の高い写真撮影タイミングの取得による写真撮影位置の高精度化と、カメラのイメージセンサー中心位置とGNSSアンテナ中心位置の相対位置補正による、さらなる高精度化を行う。具体的には、2020年度は、写真撮影のタイミングを飛行ログ等から推定することで得たが、2021年度の開発は、カメラからのシャッタータイミングの信号をGNSS受信機で電子的に受け、その瞬間の座標を得る研究開発を行う。2020年度に用いた一般的なドローンからは、シャッタータイミングを得ることが難しいため、2021年度はシャッタータイミングを出力できるコンパクトカメラ(例:RICOH GRIII)と、それを搭載できる中型のドローン(例:DJI社製Matrice200シリーズ、自作中型機等)を導入する。ドローンは機体の自己位置保持のため、飛行中常時姿勢が変化する。また、カメラもジンバルを介して搭載するため、姿勢が一定ではない。このため、精度の高いドローンの位置情報を、カメラのイメージセンサー中心の位置と常時整合させることで、さらなる精度の向上を行うことが可能となる。ドローンの姿勢情報及びジンバルの姿勢情報を、ドローンの飛行制御装置のログから取得し、シャッタータイミングと突合し、写真撮影タイミングのGNSSアンテナ中心とイメージセンサー中心の相対位置を推定するプログラムを開発する。さらに、高精度化された写真の位置情報を、写真の付帯情報として反映することで、UAV斜め写真ブラウザによる写真と地図の統合の高精度化を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大の影響により、参加を予定していた学会が中止となったり研究打合せをオンラインで行うことになり、旅費を繰越すこととなったため。
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