2023年度は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)に匹敵する精度をもちつつ、基地局を必要とせずに精密測位を行う高精度単独測位:PPP(Precise Point Positioning)方式によるGNSS測位手法を、RTKの代わりに用いるための実験・検証を行った。特にCLAS-PPP(Centimeter Level Augmentation Service-PPP)は、日本独自の準天頂測位衛星システムであるQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)や地上電子基準点網GEONET(GNSS Earth Observation Network System)からの測位補強信号を受信して、精密測位を行う測位方式であり、世界に先駆けて日本で運用が実現しているGNSS精密測位方式である。CLAS受信機は、これまで高価(50万円から200万円程度)だったが、2022年に小型・軽量の評価版の受信機が1万円程度の価格で販売開始されたため、本研究で用いるための受信機として最適である。これと2周波多システム受信機を組み合わせて運用し、測位精度の検証を行った。静止点での測位では、水平方向に約5cm、鉛直方向に約20cm程度での収束を得ることができた。この結果はRTKより劣るが、本研究で用いるACP法で使用するためには十分(ドローンのホバリング時の揺らぎよりも相対的に小さい)である。また、CLAS受信機を移動体に搭載しての測位の実験も併せて推進している。2024年1月に発生した能登半島地震の被災地での移動体計測(約700km)を行い、地震発生前の数値表面モデルと比較することで、地震による地殻変動に関する広範囲の精密な地上検証データを構築することに成功した。
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