研究課題/領域番号 |
20K04727
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
熊谷 樹一郎 摂南大学, 理工学部, 教授 (00319790)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 空き家 / 階層ベイズ順序ロジットモデル / 局所人口 / 局所世帯人員 / 空間的自己相関分析 / 都市のスポンジ化 |
研究実績の概要 |
「広域的な空き家分布の推定精度の向上」については,寝屋川市の協力の下,水道栓データ,固定資産データを入手するとともに,当該年度の空間データを整備し,これまで蓄積してきたデータを合わせることで経年変化を捉える環境が整備できた.前年度に,寝屋川市との協議の基で対象領域の特徴的な地区である「密集住宅地区」「中心市街地地区」「郊外住宅地区」「国道沿道地区」「歴史的地区」のそれぞれについて現地調査範囲を拡大し,その範囲内での調査を実施した.その結果,2年連続で空き家と判定された建物を抽出することが可能となった.一方で,現地調査範囲の拡大に伴い,これまで空き家の推定に適用してきた順序ロジットモデルでは処理の長時間化といった課題が生じた.処理効率の高いあらたな推定モデルの適用について検討していく必要性が明確となった. 「局所人口に基づいた空間スケールの計測手法の開発」では,昨年度国勢調査・基本単位区のデータから整備した局所人口データに加えて,局所的な世帯人員(世帯あたりの人員)のデータを整備した.本研究で開発してきた空間スケールの計測手法の適用によって,人口の集積する領域内で局所的に人口の少なくなる地区とその範囲・規模が同時の抽出できることが明らかになっている.その一方で,人口の減少する地区で注目すべきは高齢化と世帯人員との指摘もある.つまり,高齢化が進み,かつ,世帯人員が減少していれば,高齢者の独居が進む傾向にあると見なすこともでき,都市構造の空間特性としても重要な要素となる.そこで,局所的な世帯人員のデータの適用を試みたところ,局所人口とは異なる空間特性を示すことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19拡大のなかではあったが,「広域的な空き家分布の推定精度の向上」においては現地調査を実施でき,貴重な情報の蓄積が実現できた.また,分析手法の課題も整理されるなど,昨年度から着実に進展したといえるであろう.また,「局所人口に基づいた空間スケールの計測手法の開発」では,周辺自治体へのヒアリングを実施することができ,分析結果と自治体からみた現状とを突き合わせた上で,意見交換することができた.さらには,世帯人員といったあらたな視点での空間特性の分析に着手でき,貴重な知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
「広域的な空き家分布の推定精度の向上」については,現地調査を継続していくとともに,調査そのものの精度向上を目指し,上空からの画像の適用を検討する予定である.さらに,あらたな空き家推定手法の候補としてランダムフォレストなどのアンサンブル学習を取り入れることを検討する. 一方,「局所人口に基づいた空間スケールの計測手法の開発」では,大阪府と並行に進めている香川県での分析を進め,局所人口と局所的な世帯人員との関連性を明らかにする.併せて,感染症拡大の様子を見ながらとなるが,現地調査の実施計画を見直し,可能な範囲での調査を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では,COVID-19拡大の影響があり,現地調査を引き続き一旦中止している.次年度については,感染症拡大の様子を見ながらではあるが,昨年度に実施できた自治体へのヒアリングなどの経験を基に現地調査の実施計画をあらためて策定し,可能な範囲での調査の実施を見据えた使用計画を立てている.
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