研究課題/領域番号 |
20K04728
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
葛西 誠 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20579792)
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研究分担者 |
柳沼 秀樹 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 講師 (70709485)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単路部ボトルネック / 交通流 / 決定論的カオス |
研究実績の概要 |
自動運転車と一般車との混在局面において、単路部ボトルネック上流での自動運転車による身代わり減速波発生による渋滞抑制を実現させるためには、交通流を構成する支配的な挙動としての追従挙動を的確にモデリングすることが必要不可欠である。追従挙動には非線形性がある可能性が高いことが良く知られており、非線形性に由来する決定論的カオスの性質が内在する可能性がある。決定論的カオスの性質があればその性質を保存するように追従挙動をモデル化する必要がある。 当初計画では単路部ボトルネックおよびその上流の交通流をUAV(ドローン)にて空撮し、その動画像データを追従挙動データへ変換した後に追従挙動のモデリングを行なう予定であったものの、新型コロナウイルス感染症拡大抑止の観点から現地での撮影ができず、阪神高速Zen Traffic Data(ZTD)データを借用し分析用の追従挙動データを確保した。このデータのうち1セット(1時間分)にカオス時系列解析を適用し、追従車1台毎に決定論的カオスの性質を判断するためのリアプノフ指数を計算したところ、計算条件により若干の差異はあるものの対象とする1803台のうち約6割の追従車のリアプノフ指数が正となり、これらの決定論的カオスの性質が示唆された。このことは、直接には決定論的カオス性を示すような追従挙動モデルの構造を次年度検討すればよいことを意味する。ただし、時空間的に決定論的カオス性の偏在があるか否か、あるいは車両個体によってその性質の有無が異なるかは追加の分析が必要である。特に、サグ等の縦断勾配変化の影響が決定論的カオスの性質とどう関係するかが重要である。 次年度以降、自動運転車の制御方策の違いによって後続の一般車の挙動およびその累積としての交通流現象がどのように異なるかを交通流シミュレーション等によって検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画では、単路部ボトルネック部およびその上流における交通流をUAV(ドローン)にて空撮し、動画像データを追従挙動データ等の交通流データへの変換を行なう予定であったが、新型コロナウイルス感染症感染拡大抑止の観点で大幅に遅れた。しかし阪神高速Zen Traffic Data(ZTD)を借用することで代替となる追従挙動データを用い追従挙動の決定論的カオス性を判定することが可能となった。ただし、予定していた撮影候補箇所は暫定2車線(片側1車線)の追越のできない区間であるのに対し、ZTDは4車線(片側2車線)区間のデータであり追越挙動の影響があることなど、当初想定していた区間で取得されたデータでないことが今後交通流モデル構築スケジュールにわずかな影響を与え得るものの、おおむね当初予定通りの進捗状況と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
以下が今後の推進に必要な項目である。1)単路部ボトルネック部およびその上流における車両挙動(特に追従挙動)のモデリングであり、決定論的カオス性を示す時空間的偏在があるか否かを検証の上、この性質を再現するモデルが求められる。特に縦断勾配変化の影響と決定論的カオス性との関連に着目する。2)決定論的カオス性を考慮した上での交通流士シミュレーションの構築である。ここで、自動運転車の運転制御の違いによる身代わり減速波の効果が推計される。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大抑止の観点で、単路部ボトルネック部およびその上流部におけるUAV(ドローン)による空撮が予定通り実施できなかったことによる旅費の支出がなかったこと、また空撮動画像を車両挙動データへ変換する作業に見込んでいた謝金・アルバイト等の支出がなかったことによる。今後同感染症の状況によるものの空撮を実施し、また時間短縮のため車両挙動データへの変換を外部委託することも検討する。
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