本研究の目的は、(1)環境・産業・社会に関わる景観形成システムの歴史的変化過程を評価する手法を確立すること、(2)地域づくりの担い手の育成およびハード・ソフトプログラムの計画手法を構築すること、である。これらにより景観の固有性を明らかにするとともに、景観形成のメカニズムを把握し、変化を予測し、脆弱性を補強する方法論を確立する。さらには、実際のフィールド調査および実践のなかで、地域・景観を支える担い手づくりや、多主体の連携・協働を生み出すための地域ダイアログ(対話)手法の開発を行うことを目指した。2023年度は下記に示す対象地において調査研究を進めた。 ・風致地区や歴史的風土保存区域・歴史的風土特別保存地区に指定されている京都市の山辺・水辺の景観を対象に、その価値形成および保全制度の形成過程について研究を進めた。また、景観保全のための仕組みづくりについての調査研究を進めた。これらを論文としてまとめ、研究発表を行った。 ・兵庫県・揖保川流域圏および姫路市網干地区を対象に、地域協働による地域資源の調査を行い、その成果を『発見!網干遺産』として刊行した。 ・兵庫県たつの市龍野地区における空き家活用・再生の実態を明らかにし、その特徴的なスキームや工夫点について論文にとりまとめた。 ・近江八幡市の安土地区において、住民参加による地区別将来ビジョンの策定を進めた。また、西の湖およびその沿岸について、その保全・活用案に関する調査を進めた。 ・東近江市永源寺集落においてUAV-SfMによる三次元復元技術を用いた集落景観の記録とその調査手法の有効性についての検討を行い、研究発表を行った。
|