我が国では高齢化に伴い,高齢の運転免許保有者が増加している.1998年に自主返納制度が開始され,免許返納者は2019年まで増加傾向にあり,2020年にコロナ禍の影響もあり,約55万人(前年比約5万人減)が自主返納を行っている.一方,2019年の都道府県別の75歳以上の免許保有人口あたり返納率を見ると,東京都,神奈川県,大阪府,などが高く,大都市圏での返納率が高い傾向にある.これらは,運転免許返納後の代替交通手段の存在や地域特性が影響していると考えられる.特に,地方部の高齢者は,自分で自由に自動車を運転して外出できるかが,外出頻度などに影響していると報告もあることから,地域特性が運転免許返納者の利用交通手段に影響すると考えられる.また,外出頻度の低下などは,高齢者の健康やQOL低下にも繋がる.そこで,本研究では,地域特性が運転停止者の利用交通手段およびQOLに影響を与えると考え,その事例調査として,地方部と都市部の各1地域を対象に,運転停止者の利用交通手段がQOLに与える影響について考察することを目的としている. 本研究では地方部と都市部の各1地域を対象に,運転停止者の利用交通手段がQOLに与える影響について検討するため,地方部である米原市と都市部である大阪市生野区を対象に調査した. 運転停止者の外出頻度に影響を与える要因としては,身体機能の低下が最も影響を与え,ついで,地域の違いであり,地域差が運転停止後の外出頻度に影響を与えることがわかった.地域別の運転停止者の外出頻度に影響を与える利用交通手段は,生野区では,自転車,米原市では,自転車とデマンドタクシーであり,都市部では自転車が利用できるか,地方部では,自転車に加え,公共交通の利用も外出頻度に影響していることがわかった. ・運転停止後の健康関連QOLの維持に有効な手段としては,自転車を活用することが有効であることがわかった.
|