研究課題/領域番号 |
20K04748
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
橋本 くるみ 広島大学, 環境安全センター, 特任助教 (40821012)
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研究分担者 |
西嶋 渉 広島大学, 環境安全センター, 教授 (20243602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウルトラファインバブル / ナノカプセル / 蛍光標識 / 余剰汚泥 / オゾン |
研究実績の概要 |
下水処理によって発生する余剰汚泥減容化技術において、オゾンを直径1μm以下の超微細気泡(UFB)として供給すれば1/3のオゾン供給量で従来と同等の汚泥の殺菌が可能であると分かっている。作用機序としてフロック内部にオゾンUFBが浸透し内部から殺菌を進めているのではないかと考えられるが、現在のところ明確な証拠が無い。この機構を解明するために、気泡を蛍光標識し、視覚的に浸透作用について評価することとした。 医療用のナノリポソームを作成したCaiら(2015)の方法を参考に各種の検討を行い、修正法によりナノリポソームの作成を行った。DiI標識したリン脂質膜をUFBを含有するリン酸緩衝液で水和後、30分間の超音波処理と遠心分離を行うことにより、約100 nmのサイズのリポソームの形成が確認された。また、超音波処理を行わず、高強度の撹拌を行った後遠心分離した場合には、数μm~数十μmのリポソームを作成できることが確認できた。共焦点レーザー顕微鏡での観察により、マイクロサイズのリポソームを汚泥フロックと混合した場合にはフロックの表面へ付着している様子が確認された。一方で、ナノリポソームは汚泥フロックの内側でも検出された。リポソームは疎水性であり、フロックも疎水性であることから、リポソームはフロック表面に吸着されやすいものと推定され、フロック内部でナノリポソームが検出されたことにより、ナノリポソームのフロック内部への浸透が示唆された。このことから、同様に疎水性であるUFBもフロック内部に浸透しうることが示唆された。ただし、浸透の過程などについては現段階では詳細に観察できておらず、今後の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、① オゾンUFBによる汚泥フロック内細菌の殺菌の作用機序の解明、② オゾンUFBの汚泥フロックへの浸透に影響を及ぼす作用因子の解明、③ 汚泥フロックと微細気泡化オゾンの反応モデルを用いた最適処理条件の検討の3つを検討項目としている。これまで、①に取り組み、形成を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて汚泥にUFBを添加した時の挙動について観察した。今後、実際に汚泥をUFB処理しているときに近い条件でのUFBの挙動については詰める必要があるが、ここまでは順調に進んだものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で、今後の研究において必須となる蛍光標識ナノリポソームが作製でき、共焦点レーザー顕微鏡で挙動の追跡が可能であることを確認できた。また、2年目はさらに実際に近い条件における汚泥内でのUFBの挙動や、気泡の特性による挙動の違い(サイズ、ゼータ電位)および汚泥フロックの特性の違い(フロックサイズ、間隙サイズ)について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、実験できない期間が生じたことや、予定していた学内の共同利用機器が利用できない期間が発生したことなどにより、計画自体に遅れが生じたことと、当初予定していた学会参加費がなくなったことなどにより、余剰が生じた。また、リポソーム作成の参考としたCaiらの論文は、生体への導入を目的としたリポソーム作成であったため、多種の試薬や高価なガスを必要としたが、本研究では汚泥への添加目的のリポソーム作成であり、生体適合性を高めるための試薬がなくてもリポソームが問題なく形成できることが実験を通してわかったため、当初の想定よりも消耗品費が抑えられた。 ナノリポソームの形成が今年度内に行えたため、次年度は共焦点レーザー顕微鏡を用いてフロック内でのリポソームの挙動について頻繁に測定することとなる。共焦点レーザー顕微鏡の使用料、蛍光染色剤、リン脂質、その他高価な消耗品があるためそれらへの支出と、汚泥のサンプリングにかかる消耗品費、学会参加費などに充てる予定である。
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