下水処理において余剰汚泥と呼ばれる廃棄物が大量発生する。この余剰汚泥の減容化において、オゾンにより殺菌した汚泥を微生物分解させることで減容化する方法がある。これまでの研究で、オゾンを直径1μm以下の超微細気泡(UFB)として供給すれば1/3のオゾン供給量で従来と同等の汚泥の殺菌が可能であることを明らかにした。その作用機序として汚泥のフロック内部にオゾンUFBが浸透し内部から殺菌しているのではないかと考えられたが、現在のところ明確な証拠がない。作用機序解明のために、まず蛍光標識した粒子を用いて浸透作用について評価した。 気泡サイズによる浸透の影響を確認するために、サイズの異なる蛍光ポリスチレン粒子を汚泥と混合したときの浸透性を検討した。マイクロ粒子は汚泥内部に浸透できないこと、UFBを模したナノ粒子はフロック表面の緩い部分に浸透しうるが、強い撹拌を受けても崩壊しないフロック深部には浸透しないこと、マイクロバブルサイズではフロック内に浸透できない知見を得た。また、フロックはpH中性付近で正電荷、ナノ粒子は負電荷を有し、静電気的な引力も浸透に影響を与えていると考えられた。また、フロック周囲の液組成がオゾンUFBのフロックへの浸透に及ぼす影響について酸素マイクロセンサーを用いた検討を行った。汚泥を入れたリアクターにオゾンUFB水を添加する際、フロック周囲の液流により、フロックが流れたり、せん断力により崩壊してしまいオゾンの浸透の測定が困難であるという課題が生じた。フロックの固定やリアクター形状の工夫が必要であることが洗い出された。 UFBは洗浄や生理活性効果などが多数報告されているが、目に見えないため、作用機構は不明確な部分がある。本研究は解明の一端となり、UFBの応用につながると考えられ、学術的な意義が大きいと考えている。
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