2020年度は既往研究対象の小河川31区間と、大河川佐波川500m×2区間で環境DNAメタバーコーディング法による分析とEEDの算定を行った。しかし、明確な関係を見出すことはできなかった。環境DNAの流下距離に関する定説がないこと、環境DNA分析で種の在否のみしか判定できないことが原因と考えられた。 2021年度には、環境DNA濃度が算定できるqMiFish法を採用し、石狩川水系5河川、阿賀川、佐波川の大河川流域に絞ってqMiFish法による環境DNA調査および流況シミュレーションに基づく生態環境多様性指数(EED)計算を実施した。また、環境DNAの流下に伴う濃度変化簡易モデルを作成し、佐波川の流下方向の環境DNA変化の説明を試みた。この結果、減少速度係数K=3.55[1/hr]を得た。環境DNA濃度と河川流況によって流下距離は数十mから10km以上にまで変化することが明らかとなり、既存の環境DNA流下距離の報告を包括的に説明できた。石狩川、阿賀川の環境DNAについては、調査時の降雨などの影響もありEEDとの関係において有用な結論を得るには至らなかった。 2022年度には、石狩川の環境DNAの再調査を実施した。また阿賀川での減少速度係数を算定し、佐波川と同様の結果を得た。石狩川本川3点の上流の影響を除いた環境DNA濃度を求めたところ、下流2点の環境DNAとEEDの間に正の相関が認められた。上流1点は1.5km上流の堰による大水深の存在や、下流2点との土地利用の違いなど、EEDで考慮されない要因が影響していると説明できた。支川の合流点付近の環境DNAと魚種数の関係についても、流域の土地利用や流域規模の違いでばらつきは認められたものの、EEDのヒストグラムにより魚種数の違いを説明できた。 以上より、大河川でもEEDと魚種数の正の相関を示すことができた。
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