研究実績の概要 |
洗濯排水に含まれるポリエステル繊維や路面排水に含まれるタイヤ片が下水処理過程で下水汚泥に移行し,農地にマイクロプラスチック(MPs)として残留する状況を想定して,下水中や下水汚泥中のMPsの分析法の確立と都市域でのMPs挙動について研究した。 期間全体では,まず,劣化プラスチックを含むMPsのサイズによらない分析法として,熱分解GC/MS法について検討を進め,とくにPET繊維に対する熱分解物のうちテレフタル酸をターゲットにする方法,路上堆積物中のタイヤ分析法としてベンゾチアゾールをターゲットにする分析法を開発した。また,洗濯排水からのPET繊維の分析前処理法として,酸処理による綿,麻の溶解除去法や熱アルカリ処理による羊毛の溶解除去法を確立した。前年度までに実施したPET繊維の環境試料分析の結果,公園土壌から0.15~2.4 mg/g,河川底泥から0.05~0.27 mg/gのPET換算MPsを検出した。 最終年度には,さらに路上堆積物中のタイヤをベンゾチアゾールをマーカーとして測定し,道路わき堆積物乾重1gあたり2~110μgのベンゾチアゾールを含有していることをあきらかにした。この結果は,交通量の多い場所で堆積物乾重の5%程度がタイヤ粒子であることに相当した。タイヤ粒子の密度が水より小さいことから,模擬降雨実験で,その33%~62%が容易に流亡し,降雨時にタイヤ粒子が容易に下水道へ取り込まれることが示された。 下水汚泥中のMPsの分解に関連して,活性汚泥中の膜透過性細菌群集を調べたところMethylobacterium属, Microbacterium属などの細菌が単離された。また,マイクロプラスチックのフィールド調査の過程で,カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の調査を同時に実施し,臨床での報告と比較して環境中から検出されやすい細菌種や遺伝子型についてあきらかにした。
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