研究課題/領域番号 |
20K04760
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
本郷 哲 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (80271881)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 走行音 / 冬季路面 / 音響分類 / ディープラーニング / 圧雪 / シャーベット |
研究実績の概要 |
AI やセンサ技術の進展によって,路面の状況を判別するシステムが数多く開発され,実証実験が行われている.し かし,それらの多くはカメラによる画像認識技術を用いたものであり,悪路においてはカメラの汚れや太陽光の反射 等により誤認識を起こす可能性がある.また,タイヤにセ ンサを配置するCAISの開発も行われてはいるが,無線を 実現するための発電装置の課題等も存在する. そこで本研究では,走行時の空中音に着目し,その変化を認識することで冬季の路面状況を判別する手法を提案している.研究全体の概要としては、複数の路面状況の走行音をマイクで収集し,得られた音響データに対して深層学習を行ってネットワークを作成し,路面状況を判別するものである. 本年度は,車両の走行音を収録する際に,昨年度の収録実験の結果を踏まえて,風切り音対策,およびノイズ対策を行って収録した.具体的には乗用車のサイドシル下部に,本研究で開発した風切り音対策シールドに収納した小型マイクを設置し,冬季に宮城県仙南圏近辺を走行して空中音を収集し た.得られた録音データから,乾燥(dry),湿潤(wet),シャーベット(slushy)の 3 種類の路面状況の音データを2秒ずつ多数切り出して学習サンプルとし,種類毎のクラスを作成した.なお,サンプルの数はそれぞれのカテゴリごとに100個または200個確保し、この他に検証用データを確保した. dry・slushyの組合わせの認識精度,及び損失の推移をまず調べた.この組合せは,Valid Acc.と Train.Acc.の差(精度差)が小さく,テストデータによる推論の正答率も 100%だった.また,dry・wet,及び全クラスでは,認識の正答率はそれぞれ80%,88%と概ね判別が実現できた.一方で,wet・slushyの組合せの場合には,正答率は73%に留まった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験のための音データ確保のために、実験のための出張を予定していたが、2020年度に引き続き、2021年度もCovid2019の影響による緊急事態宣言や海外渡航の制限が政府や自治体からの要請があったため出張や海外渡航が不可能となったため、遅れている。 居住地近くの宮城蔵王における実験は可能であったが、路面状況の中でも極低温環境下で、判定が重要となるアイスバーンやブラックアイスバーンにおける実験データが非常に不足する結果となっており、低温路面状況における測定が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
現在実験のための旅行ができなかったため,圧雪やアイスバーン等の路面の走行音の収集が不足している。寒冷地に赴き、アイスバーンなどの走行音測定実験を行い、圧雪やアイスバーンのクラスを追加し,dryやwet同様の十分な検証を行えるようにする必要がある. また,一般的に過学習は訓練データが不足している場合等に発生するとされており,dryやwetについてもシャーベットとの分離実験においては過学習気味であることが確認されていることから,さらに路面走行音の収録を行ってサンプル数を増やし,過学習が解消できるか検証する必要がある. 同時にwet・slushyの判別については熟練運転手の聴感覚上も困難な場合も見受けられたので,判別のカテゴリ区分について,実現可能性を踏まえて検討を要する.具体的には,シャーベット状の路面においても,水分量が多い場合と雪の含有量が多い場合では滑りも走行音も異なるが,水分量が多い場合には,音響的特性もまた路面の滑り状況もwet路面に近いものであると考えられる. この路面状況の区分についても再検討を行うことで,見た目(画像による認識)以上に音響的な認識による効果が現れる可能性が高い. さらに,分類のためのディープラーニングの手法についても検討を行う.現時点ではDeep Analyzerのデフォルト設定により学習を行っているため,ディープラーニン学習用のハイパーパラメータなどの検討も行う必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid2019の影響により,走行音収録実験に伴う旅行が全て不可能となった。 このため,旅費全額と収録実験にかかるマイクや実験消耗品類の購入を行えなかったため、大きな剰余が生じた。実験計画も遅れているため,本研究の期間延長の上,使用していく予定である。
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