研究課題/領域番号 |
20K04764
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
小林 拓朗 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (10583172)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 厨房排水 / 廃油脂 / 脂肪酸 / メタン発酵 / 生物膜 |
研究実績の概要 |
オンサイトバイオガス化施設において投入される含油汚泥と食品残渣の混合物を処理するメタン発酵を模擬したラボスケール装置において、生物膜培養方式の処理特性を一般的な浮遊培養方式のそれとラボスケール連続実験において比較したところ、阻害因子となる油脂由来の高級脂肪酸の濃度が浮遊培養方式では数百~1200 mg/Lの濃度で変動したのに対し、生物膜培養方式ではを200日間以上にわたって100 mg/L未満の低い水準に維持可能で、より安定した処理が可能となることが明らかとなった。その濃度水準は生物膜高温<浮遊培養中温<浮遊培養高温であったことから、中温発酵、高温発酵それぞれの菌体の高級脂肪酸濃度に対する阻害の感度を調査したところ、同一のバイオマス量あたりのメタン生成菌(酢酸資化、水素資化性それぞれ)には中温と高温で差異がなく、バイオマス量の増加に応じて阻害が軽減された。このことから、生物膜法式によるバイオマス量の増大が、含油汚泥の混合発酵にポジティブに寄与すると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象としている現場のニーズの変化を踏まえて、当初研究計画で重視していた生物膜形成のメカニズム解明よりも、生物膜法式を導入することによる効果の検討を優先させたが、後者の成果は十分に得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現場のニーズを踏まえ、汚泥と食品残渣だけでなく、排水に由来する油脂を含む有機成分からのメタン回収にも取り組む。加温エネルギーを節約するために室温での発酵が必要となるため、室温での生物膜の保持と安定な処理が可能な条件を特定する。また、脂肪酸とカルシウムイオンとの共存により、生物膜の発達加速化が可能であることを確認している。立ち上げ時において、その手法の有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症等の理由により、研究協力者が実施している実証施設や学会発表のための旅費等に経費を使用する必要がなくなったため、次年度において新たに開始する排水を処理するためのバイオリアクターの作成に必要な部品等の購入に次年度使用額として請求した助成金を使用する予定である。
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