商業施設等における廃棄物、排水からの一体的なメタン回収システムの構築を目指し、油脂等を含有する廃棄物、排水のメタン発酵において、生物膜形成による効率化を目的とした実験的検討を実施した。前年度、高油分含有生ごみを処理するメタン発酵の連続実験において、通常の完全混合方式の中温および高温メタン発酵と比較して、生物膜方式の高温メタン発酵は残留する高級脂肪酸濃度が低濃度に維持可能で、高負荷においてより高い安定性を示したことを踏まえ、高級脂肪酸の阻害性に対する、発酵温度と汚泥(微生物)濃度の影響を検討した。その結果、水素資化性メタン生成菌と比較して酢酸資化性メタン生成菌は、1/3程度低いオレイン酸濃度で活性が50%低下することが明らかとなり、その濃度は温度に依存しなかった。一方、一定のオレイン酸濃度下におけるメタン生成活性は、汚泥濃度に大きく依存し、中温高温どちらにおいても、酢酸資化性メタン生成菌の活性はVS濃度2から6g/Lの範囲ではVSに比例して高くなり、6gにおけるそれは2gの3倍以上であった。このことから、油脂由来の阻害は温度に依存せず、生物膜法等を用いて微生物濃度を高めることで軽減可能であると考え、次に低温下における生物膜方式の処理の優位性を検討した。生ごみよりもより有機物濃度が希薄である厨房・ディスポーザー排水の加圧浮上水を対象とし、25℃の条件における連続処理実験に着手した。
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