油脂を高濃度に含む有機性廃棄物及び排水の嫌気性処理において、浮遊培養系において阻害物質に対する温度、濃度の影響について明らかにするとともに、生物膜の発達有無による阻害に対する感度の違いを調査し、生物膜の発達系での阻害の緩和が確認され、より高負荷の条件で効率的に処理が可能であることがわかった。具体的には、油脂の加水分解で生じる高級脂肪酸による阻害の影響が大きく、酢酸資化性のメタン生成菌は水素資化性のメタン生成菌よりも阻害に関して敏感で、活性が50%低下するオレイン酸濃度は、中温の酢酸で0.42mM、中温の水素で1.57mM、高温の水素で1.66mMであった。高温では全く酢酸利用活性を示さなかった。また、阻害に対する感度は水素資化性菌の場合は菌体濃度にも依存し、5mM/g-VSを超過すると阻害が生じることがわかった。このことで、生物膜を使用し、菌体濃度を高めることが有効であることが予想され、脂質/VS濃度30%程度の原料を対象とする連続処理実験を検討したところ、生物膜有の系ではなしの系と比較して中間体であるVFAの濃度が3分の1以下の500 mg/L未満に維持でき、高い油脂負荷でも安定した運転が可能であることが確認された。また、短期的に発達する脂肪酸と微生物との複合凝集体の形成について、油脂を吸着する粉末炭化物有無の条件で比較したところ、粉末炭化物有りの条件では形成されないことがわかった。さらに、この凝集体未形成の場合の方が、反応速度が大きくなることが確認され、凝集体を形成するよりも分散を促進した方が処理の効率の点では有利であることが示唆された。
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