研究実績の概要 |
本研究の目的は,圧縮軸力を受ける部材の曲げ座屈荷重増大のための偏心圧縮材を補剛材として用いた新形式の座屈補剛による耐震改修方法の開発および接着剤を用いた簡便な補剛材接合方法の構築である。本研究で提案する補剛形式は,補剛の対象となる部材に別の部材(補剛材)を沿わせて材端のみを接着剤で接合するのみで構成可能な形式である。本研究では研究期間3年間で数値解析および座屈実験により以下のことを明らかにすることを計画して進めてきた。 1) 補剛すべき部材である主材と補剛材を軸方向中央部において一体化する機構(変形制御機構)の開発・提案 2) 主材と補剛材の接合方法として接着剤を用いた場合の補剛効果の検討 3) 種々の材料(鋼材,木材等)を使用した場合の補剛効果の検討 4) 外力として軸力・曲げが加わった際の座屈挙動の解明と補剛効果の検証 5) 本補剛形式を構造物に組み込んだ際の雪荷重等に対する座屈性状,地震時挙動の分析 6) 提案補剛形式の設計手法,既存の部材への耐震補強の方法を提案する 研究期間1年目においては,上記1)について開発・提案を進め,2)のための数値解析による検討および予備実験を実施した。2年目においては,2), 3)について1年目の予備実験結果に基づいた本試験を実施した。3年目においては,2年目までに得られた知見を元に1)~3)について更に改良し,鋼製の主材の軸方向中央部に鋼棒を溶接し,その鋼棒にコイルバネを巻き付けることで,鋼棒により主材と補剛材からなる断面の一体化を図り,コイルバネにより補剛材拡幅方向への変形を補助する機構の効果を座屈実験により検証した。結果として,本機構の導入により座屈荷重を1.15倍増加させることができた。一方で機構の改良に尽力したため,4)~6)でも特に様々な荷重条件を対象とした検討が進められなかった点は,今後の課題である。
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