鉄骨母材に頭付きスタッドを垂直に溶接する在来型の頭付きスタッドに対して、頭付きスタッドを45°傾斜させて溶接することで頭付きスタッド1本当たりのせん断剛性とせん断強度を増大できる新型接合工法を考案しており、実構造物へ活用するにあたり、作用する応力を考慮した上でどのような構造へ新型接合工法を適用することが効果的であるか提示することが必要である。本研究では、傾斜型頭付きスタッドを合理的に活用できる構造として、近年、普及が進んでいる柱を鉄筋コンクリート(RC)部材、梁を鉄骨(S)部材とする混合構造(以後、柱RC梁S構造と称す)を対象とし、① 地震力を受ける柱梁接合部への適用効果、② 地震力を受ける合成梁への適用効果、③ 合成梁を有する柱梁接合部の応力伝達機構と構造性能について明らかにすることを目的とした研究に取り組んだ。 傾斜スタッドの有効性を示すには、構造実験による検証を行なうことが不可欠である。最終年度は、前年度に引き続き、一定圧縮力下で正負繰返し地震力を受ける柱RC梁S構造の柱梁接合部部分架構および合成梁付きの柱梁接合部部分架構の載荷実験を行い、前述した研究目的の①、②について明らかにしたが、傾斜スタッドを用いることによる効果は顕著ではなかった。一方で、研究目的の③について検討することによって、傾斜スタッドを用いることによる効果が顕著ではなかった理由について明らかにすることができたため、本接合工法を効果的に適用するための条件がわかり、今後の研究の展開に対する活路を見出せたことが大きな研究成果であると考えている。また、本研究によって、傾斜スタッドを適用した柱RC梁S構造における柱梁接合部と合成スラブの終局耐力の評価式を構築することができた。
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