研究課題/領域番号 |
20K04785
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
田中 照久 福岡大学, 工学部, 助教 (90588667)
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研究分担者 |
堺 純一 福岡大学, 工学部, 教授 (30215587)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 合成構造 / 接合部 / シアコネクタ / 復元力特性 / 耐力評価 / ずれ止め効果 / 補強効果 / 破壊性状 |
研究実績の概要 |
本研究は,申請者らが開発したバーリングプレス加工鋼板(以下,バーリング鋼板と呼ぶ)を用いた「バーリングシアコネクタ」と称する機械的ずれ止めを対象とし, 1) 多数回繰り返し力が作用するずれ止めの耐力劣化性状を考慮した耐力評価法を提案すること,2) バーリング寸法や設置方法の違いがずれ止め特性に及ぼす影響を定量的に明らかにすること,を目的に,2021年度に実施した研究成果の概要を以下に示す。 2021年度は,シリーズ1として,昨年度行った繰返し押抜き試験の実験データを用いて,バーリング鋼板の孔径がずれ止め特性に及ぼす影響を定量的に評価するため,各ずれ変位時の耐力の変化に着目した分析を行った。同時に,コンクリート強度の影響を把握するための繰返し押抜き試験の実験計画を検討した。主な実験変数は,ずれ止めの種類,コンクリート強度および載荷方法とした。次にシリーズ2として,バーリング鋼板の設置に応じたずれ止め効果および補強リブ効果を把握するため,角形鋼管とコンクリートスラブで構成される接合部の圧縮試験を行った。実験変数は,角形鋼管の厚さ,バーリング鋼板の有無と設置箇所とした。2つのシリーズから得られた主な知見は下記の通りである。 シリーズ1より,単調載荷と繰返し載荷に関わらず, ずれ止めの最大耐力はコンクリート強度が増加すると線形的に増加すること,最大耐力時のバーリングシアコネクタに作用する抵抗力(支圧とせん断)の割合はコンクリート強度に関わらずほとんど同じであること,繰返し載荷による耐力の減少率はコンクリート強度が増加するにつれてその減少率は小さくなること,を明らかとした. シリーズ2より,角形鋼管の幅厚比が大きくなると既往の有効圧縮耐力式を満たさない場合があること,鋼管柱にバーリング鋼板を取り付けることで接合部の破壊性状および応力伝達が改善されることを確認し,その評価法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度および2021年度の2ヶ年にわたり,バーリングプレス加工した鋼板(バーリングシアコネクタ)および孔あき加工した鋼板(孔あき鋼板ジベル)を対象に,孔径,コンクリート強度および載荷方法を実験変数とした計28体の押抜き試験を実施した。これにより,地震力にも対応した鋼コンクリート接合部のずれ止め設計法を構築するために必要としていた実験データを得ることができ,繰返し力が作用した場合のずれ止めの復元力特性の定量的評価を検討した。 また,狭小な接合部でも設置可能なずれ止め設計を構築するために,バーリング鋼板の孔径,設置方法(バーリング鋼板を母材に垂直に取り付けた場合とバーリング鋼板の平板部を母材表面に密着させて取り付けた場合)およびコンクリートブロックの断面寸法を変数とした計13体の単純な押抜き試験を実施し,バーリングシアコネクタの耐力およびすれ変形を定量的に調べ,それらの破壊メカニズムを明らかとした。また,その研究成果を考慮して,鋼管とコンクリートスラブで構成される接合部の実大試験体(計5体)の圧縮載荷試験を行い、バーリング鋼板の設置方法に応じたずれ止め効果と補強リブ効果の役割を明らかとし,バーリングシアコネクタの耐力評価法を検討した。 以上より、前年度までの研究目的は8割以上を達成したといえ、2021年度の研究達成度は概ね順調に進展しているものと判断できる。よって、2022年度には本研究の当初の目的を全て達成可能である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,前年度までに検討したずれ止めの耐力設定と設置方法を変数とした鋼-コンクリート接合部の実大試験体による繰返し載荷実験を行い,鋼とコンクリート間の応力伝達とその抵抗機構に及ぼす影響を明らかにし,繰返し力を受ける鋼コンクリート接合部のずれ止め設計法の妥当性を検証する。また,鋼とコンクリート間のずれ変形を考慮したずれ止めの耐力評価法を提案する。 前年度までの研究成果によって,今後の実験計画に必要な基礎資料は揃っており,今後の研究を遂行する上での課題は特にない。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試験体製作にかかる費用の若干の差額が次年度使用額にまわった。次年度の研究費は、当初の予定に沿って、大半が計測用のひずみゲージ費であり、その残りを研究成果発表のための研究成果投稿費に充て、本研究課題を遂行する。
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