本研究は,申請者らが開発したバーリングプレス鋼板を用いた「バーリングシアコネクタ(以下,BSC)」と称する機械的ずれ止めを対象とし,1)多数回繰返しせん断力が作用するずれ止めの耐力劣化性状を考慮した耐力評価法を提案すること,2)バーリング寸法や設置方法の違いがずれ止め特性に及ぼす影響を定量的に明らかにすること,を目的に,最終年度に実施した研究成果の概要を以下に示す。 一つ目は,前年度に提案した上記の1)に対応する耐力評価法の妥当性を検証するために,計8体の実大サイズの押抜き試験体を準備し,単調載荷と多数回繰返し載荷の押抜きせん断実験を実施した。前年度までに得られた実験データと合わせて分析を行い,ずれ止めの最大耐力を決定付ける破壊モードを明らかにし,設計用の耐力評価式を提案した。 二つ目は,上記2)に対応するもので,BSC鋼板の平板部を母材に密着させて取り付けた場合のずれ止めの耐力評価法を提案し,2020年度に実施した実験データと比較検討した。提案した耐力評価式の計算値に対する実験値の比は,0.82~1.28(平均値1.09,変動係数0.109)であり,BSCの支圧耐力式はコンクリートの有効幅を,せん断耐力式はせん断面数とコンクリートの拘束効果を,それぞれ適切に設定することで良く対応することを示した。 三つ目は,上記2)に関連し,BSC鋼板を垂直に取り付けた角形鋼管柱とコンクリート床スラブで構成される接合部を対象としたもので,前年度に実施した実大接合部の圧縮実験で把握できない応力状態を詳細に分析するために3次元有限要素解析を行った。実験挙動を追跡できる解析モデルを構築し,剛性・耐力が変化する要因を特定することができ,角形鋼管の幅厚比に応じたコンクリートの有効圧縮耐力式を提案した。 以上,鋼とコンクリートの応力伝達に基づく力学的に合理的なずれ止め設計法を構築することができた。
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