研究実績の概要 |
従来はセメントを出発原料としたゾノトライトの工業的合成は,セメントに含まれるアルミ成分がゾノトライトの生成を阻害するため不可能であるといわれていたが,セメント中のアルミ成分の先行反応後の水熱合成によりゾノトライトを生成させ得る前水和方式が提案された。そこで本研究では,セメントを出発原料として,耐熱性,寸法安定性,耐久性に優れたゾノトライトを工業的に水熱合成するため,ゾノトライトの生成メカニズムおよび最適合成条件を確立するとともにゾノトライト系軽量硬化体の基礎性状を把握することを目的とした。 提案された前水和方式を用いることで,セメントを出発原料としたゾノトライト結晶の生成は可能であり,その生成物は低結晶性のC-S-H,トバモライト結晶,ゾノトライト結晶の順に転移することを確認し,純粋なゾノトライト結晶を生成するための最適なオートクレーブ養生条件を見出した。また,ゾノトライト系軽量硬化体の基礎物性として,細孔構造が粗大径側にシフトし,圧縮強度はオートクレーブ養生の温度時間積が大きいほど低下すること,乾燥収縮が小さいこと,熱特性に優れること,炭酸化収縮が大きくなることを確認した。 ゾノトライト軽量硬化体は炭酸化により10nm 以上の細孔が減少し細孔径のピークは粗大径側にシフトする一方で,10nm 以下の細孔は増加する傾向にあり,収縮の増大の原因となっているをことを明らかにした。 なお,既存のALCではシリコーンオイルの添加により炭酸化抵抗性を向上させる技術が実用化されているが,シリコーンオイルの耐熱温度が200℃程度であり,230℃の高温処理が必要なゾノトライトの製造条件ではその技術を適用できない問題があったが,化学気相成長法(CVD法)によりシリコーンオイルによる撥水性の付与が可能で,炭酸化抵抗性の向上に寄与することを明らかにした。
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