研究課題/領域番号 |
20K04793
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 信 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (80570746)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スラリー充填繊維コンクリート / 鉄筋コンクリート / 耐爆補強 / 接触爆発 / スポール / 版厚低減率 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究では,スラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)薄肉パネルにより裏面接着補強した鉄筋コンクリート(RC)版の接触爆発に対する耐爆性能(スポール抑止性能)について実験的検討を行った.実験は2つのシリーズから成っており,シリーズ①では,RC版厚が60mm一定の条件下でSIFCONパネル厚を10および20mmの2水準で変化させた.また,シリーズ②では,SIFCONパネル厚が10mm一定の条件下で,RC版厚を60, 70および80mmの3水準で変化させた.なお,RC版とSIFCONパネルとの接着はプレキャストコンクリートブロック用接着剤の土木学会品質規格を満足する接着剤を用いて行い,シリーズ①,②ともに爆薬量は20g刻みで適宜変化させた.その結果として,以下のことが明らかとなった. (1) SIFCONパネルを適用することにより,増厚補強に必要なRC版厚を90%強低減できると考えられた.但し,比較的厚手のパネルを用いた場合には,外観上明らかなスポールは抑止されるもののパネルの剛性増加に起因してパネル剥離が顕著となるため,パネルのRC版裏面への接合方法の検討が必要である. (2) 本補強方法は,外観上明らかなスポールを完全に抑止できるか,或いはSIFCONパネルが貫通することで甚大なスポールが発生するかの二者択一の補強方法であることが示された. (3) SIFCONパネルのRC版裏面からの剥離は,RC版内部で生じたスポール破壊片が直下のパネルを押圧し,その反力がパネルを介して周辺コンクリートに作用し,それにより同箇所のコンクリートが引張破壊することで生じると判断された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SIFCONパネル接着補強によるRC版の耐爆性能向上について実験的に確認できたことに加え,SIFCONパネル適用による増厚補強厚の低減率を特定できた点で,耐爆補強設計に資する研究成果が得られており,本研究は概ね順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
比較的厚手のSIFCONパネルを用いた場合には,外観上明らかなスポールは抑止されるもののパネルの剛性増加に起因してパネル剥離が顕著となるため,パネルのRC版裏面への接合方法の検討が必要であると考えられた.従って,今後はあと施工アンカー等も併用したRC版とSIFCONパネルとの機械的な接合方法を検討していく必要がある. また,RC版裏面に接着したSIFCONパネルの貫通破壊は,RC版内部で発生したスポール破壊片の作用に起因する動的曲げ破壊であると推察され,今後はSIFCONの動的曲げ強度および靭性の測定およびその耐爆補強設計への反映を行っていく必要があると考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大によりほぼ全ての学会等が中止となったため,旅費が全く発生しないなど,当初の計画と異なる点があった.当該助成金は,次年度以降で実験実施のための物品費および論文投稿料として有効に活用していく.
|