本研究の目標は,地震で被災した鉄筋コンクリート(RC)造建物に対する簡便・迅速・安価な機動的応急補強技術を確立することである。これを踏まえ,本研究では,高強度緊張材(アラミド繊維ベルト)による能動横拘束を,地震でひび割れが生じたRC柱のひび割れ閉合に応用する。 2020年度は,能動側圧を実験変数とした圧縮実験,能動側圧と主筋の付着の有無を実験変数とした水平加力実験を実施した。 2021年度は,能動横拘束にエポキシ樹脂補修を併用し,剛性の回復程度,曲げ・せん断の応力伝達機構の検証を目的とした加力実験を実施した。 2022年度は,実験棟改修で加力実験が実施できなかったため,これまでの実験結果の分析を進めた。その結果,能動横拘束にエポキシ樹脂を併用することにより,併用しない場合に比べて水平剛性が1.8倍程度大きくなり,エポキシ樹脂併用の効果は大きかった。 2023年度は,実験棟改修後の実験棟再始動に時間を要すると判断したため,外部企業に柱試験体の製作を依頼した。予算の都合上,試験体数は3体とした。具体的には,せん断スパン比を1.5とし,柱を長くして応急補強後の曲げ性状を確認した。実験の結果,補強間隔と緊張力を大きくする,あるいは,補強間隔と緊張力を小さくすることで同じ能動側圧とした場合,能動側圧が同程度であれば応急補強後の耐力と変形能力は概ね同じであった。能動横拘束は補強の効率化に繋がる結果が得られた。製作した残り1体については,加力装置に設置する際に柱にひび割れが生じたこともあり,応急補強の効果は期待するほど良くなかった。次の機会に再実験を計画することを考えている。
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