今年度は、孔が1つの場合と2つの場合の孔周りに作用する繊維直交方向の引張応力度の変化を有限要素解析を用いて調べた。解析対象は、梁を同一等級構成集成材、孔径Dを梁せいHの0.05倍から0.5倍、孔の間隔を梁せいHの0.1倍から2.5倍とした。解析の結果、孔の間隔が1.5H以上であれば孔径Dが0.05Hから0.5Hの場合であれば、孔が1つの場合に対して応力割増率が2%以下であることがわかった。孔の間隔が1.5H以上というのはDIN EN 1995-1-1/NAの孔間隔基準であり、この基準が概ね妥当であることがわかった。しかし、孔径Dが0.2Hで孔の間隔が1.3H以上、孔径Dが0.1Hで孔の間隔が0.9H以上、孔径Dが0.05Hで孔の間隔が0.5H以上であれば応力割増率が2%以下であったので、孔が小さい場合の孔間隔基準を緩和できることがわかった。次年度は、孔径と孔の間隔を変数とした梁の実大実験を行い、今年度の解析結果を実験的に検証する予定である。 また、今年度の解析的検討や次年度の実験的検討では、力学的特性を極力簡単にして検討を行うために梁を同一等級構成集成材としているが、実務で用いられる梁は対称異等級構成集成材が大半である。そこで、同一等級構成集成材による研究成果を対称異等級構成集成材に適用する必要があるので、過去に行った実験結果を元にして解析的検討を加え、円形孔を設けた対称異等級構成集成材と同一等級構成集成材の破壊時の耐力の検討を行った。その結果、同一等級構成集成材の孔周りに作用する繊維直交方向の引張応力度に低減係数を乗じることで対称異等級構成集成材の場合の孔周りに作用する繊維直交方向の引張応力度を求められることを提案した。
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