1、測定装置の空隙検知性能の向上を目的として,中性子線を遮蔽や集束した場合のRIカウントに対する影響を実験により評価した.簡易評価装置を用いたシリーズ1では,ポリプロピレン等の樹脂およびホウ素含有ゴム等を減速材の種類として取り上げ,減速材の種類や厚さの効果を検討した.シリーズ1の結果を反映した減速材を測定装置に組み込んだシリーズ2では,中性子線の遮蔽や集束が,RIカウントの増減傾向に及ぼす影響について検証した.その結果,ポリプロピレンは熱中性子を増加させ,熱中性子の透過を抑制すること,ホウ素含有ゴムはカドミウムと同様の熱中性子の吸収性能を有することなどが明らかとなった.RIカウントの測定値の分布形状から,図形指数と空隙反応指数という指標を考案した結果,ポリプロピレンやホウ素含有ゴムを装着した装置のRIカウントの変化から空隙の有無および位置や空隙範囲の特定がしやすくなることが分かった. 2、実際の複合構造物では補剛や補強のためにリブプレート(以下,リブ)や頭付きスタッド(以下,スタッド)などが鋼板上に配置されため,これらがRI測定装置の測定結果に影響を及ぼすこともある.また,鋼材類の他に内部の鉄筋も測定結果へ影響することが考えられる.そこで,合成床版を対象として実大に近い模擬試験体を用いて,合成床版内の鋼材類がRI カウントに及ぼす影響について実験的に検討を行った.その結果,鋼板上のリブはRIカウントに大きな影響を及ぼし,その変化の傾向は空隙と同様であるため,空隙とリブとの区別に留意が必要であること,鉄筋やスタッドは,RIカウントに及ぼす影響は小さいことが明らかとなった.また,測定装置が空隙から離れるほどRIカウントに対する空隙の影響度合いは減少し,RI カウントの減少割合と測定装置と空隙の距離の関係は2次曲線で近似できることが分かった. これらの内容は構造工学論文集に投稿した.
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