設計を上回る想定外の過大地震入力に対処するため、中間階に免震層を設けた中間層免震建物と、次世代型の複数の免震層を有する多段免震建物が免震構造設計者の注目を集めている。 基礎免震建物では、免震層の過大な変位応答の抑制対策や免震部材に生じる引き抜きや浮き上がりへの抑制対策は行われているものの、免震層が中間階に設置される中間層免震建物や免震層が複数(本研究では2つ)ある多段免震建物の免震層の最大変位応答量やアイソレータの引き抜き、引張面圧に関する研究は少ない。そこで国内外の主要な被害地震において実観測された強震動を用いた、中間層免震建物及び多段免震建物の耐震性の検証を行うことが、本研究の目的である。 初年度は、高層基礎免震建物のアイソレータの引き抜きに関する安全性の確認を行い、アイソレータの引き抜きが大きくなる強震動を把握した。研究2年目は、基礎免震高層建物において、アイソレータに大きな引き抜きを生じさせ、且つ、免震層変位応答量が大きくなる強震動を抽出した。また、免震建物の振動模型による振動実験を行って、中間層免震建物の振動模型による地震時の地震応答性状と免震層の引き抜き有無を確認した。 研究3年目は、免震建物の免震層変位応答量が大きくなることを防止するために、設計者・研究者が開発した各種ダンパーを付加した免震建物の地震応答解析を行って、免震層変位応答量を確認した。これらダンパーを用いても免震層変位応答量が大きくなる強震動の存在を明示した。研究4年目には、2023年2月トルコ・シリア地震、そして2024年1月には能登半島地震が発生した。これらの強震動もすぐに公開されてたため、本研究の解析用強震動として採用した。これら強震動を含めた国内外の強震動を、基礎・中間層免震建物に入力し、免震層免震部材に大きな引張を生じさせる入力地震動特性と免震層変位応答量に及ぼす影響について報告を行った。
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