2022年度は(1) 日傘の夏季暑熱環境緩和効果分析のための実測、(2) CFD解析による日傘歩行者周りの対流熱伝達率分布の分析、(3) CFD解析による日傘歩行者周りの微気候分析、(4) 研究全体の総括、を行った。 (1) では、日傘の夏季屋外実測を行った。この実測では、日傘の種類ごとの、①日傘の日射遮蔽効果の評価方法、②日傘による暑熱環境緩和効果の評価を行った。日傘の種類としては、従来の布日傘、暑熱環境緩和効果の高い日傘を用いた。実測の結果、①天空率を考慮して算出した日射透過率と従来の手法を基に算出された通常の日射透過率の比較を行うことで日傘の日射透過率を評価する際に天空率を考慮することの有用性を確かめたこと、②日傘下の環境は日向に比べ、約10℃程度新標準有効温度SET*を緩和すること、が明らかとなった。 (2) では、CFD解析により日傘の保持が歩行者の対流熱伝達率分布に与える影響を分析した。ここでは、人体、日傘の複雑形状を再現可能な非構造格子を採用した解析ツール(scFlow Ver. 2023)を用いて、(1) 日傘なし、(2) 日傘を水平保持、(3) 日傘を日射方向に傾けて保持、の3ケースの場合の部位別の対流熱伝達率分布を評価した。分析の結果、日傘の保持の方法次第では、頭部付近の対流熱伝達率が約7割程度まで減少することが明らかとなった。 (3) では、(2)と同じ解析ツールを用いて、(1) 日傘なし、(2) 日傘を水平保持の2ケースにおける夏季暑熱環境下の微気候の比較を行った。解析の結果、①日傘がない場合、頭部から肩、胸にかけて700W/m2以上の日射が入射するが、日傘使用時は上半身の大半の日差しを遮蔽可能であること、②日傘下の人体の胴体の発汗率が約10%程度減少すること、が明らかとなった。 (4)では最終年度として、研究全体の内容を総括し、今後の課題を明らかとした。
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