研究課題/領域番号 |
20K04815
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松山 賢 東京理科大学, 理工学研究科国際火災科学専攻, 教授 (10307704)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 竪穴区画 / EVシャフト / 煙制御 / 電界 |
研究実績の概要 |
本研究では,EVシャフト等の竪穴空間を煙突と見立て,煙の浮力を利用したスモークタワーをEVシャフトに適用し,排気・給気ファンに頼らず,長時間にわたる火災に対応すべく,効率の良い排煙手法の確立を目的としている。具体には,シャフトおよび接続する火災室の縮小模型を用いてシャフト頂部からの排煙能力を定量化,さらに排煙の効率化に向け,シャフトから他階への新たな漏煙防止方法として,電界による煙制御の実用可能性についても実験的検討を行うものである。 初年度(2020年度)は,まず竪穴空間(EVシャフト)と居室の2室を対象に,シャフト開口部と居室開口部を階層ごとに接続可能な1/20程度の縮小模型の製作を行い,予備的な実験を実施し,模型の改良を重ねることで,実験系を完成させた。 2年目(2021年度)は,EVシャフトを排煙設備に活用する技術的可能性検討に資することを目的として,縮小模型を用いて種々の実験パラメータに対する本実験の実施,ならびに理論的考察が行われた。実験では,主に火源規模および開口条件をパラメータとし,各開口での圧力分布や煙流動特性を明らかにし,さらにシャフト頂部排煙量について定量的な把握を系統的に行われた。EVシャフトを利用した排煙は,シャフト内の圧力分布,すなわち中性帯位置の把握が最も重要となるが,本研究では,その実験結果から開口部の開閉状態と中性帯位置をつまびらかにした。また,理論的考察により,シャフト内中性帯位置および排煙量算定の簡易予測手法が提案され,実験結果との比較により,その有用性についても確認している。 以上のように,本研究では実験の実施,さらには理論的考察と明解な論述により,EVシャフトを利用した排煙効果に関する工学的に有益な知見を提示することができた。今後は,排煙の効率化に向けてさらに検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2020年度)は,実験系のセットアップを中心に,模型縮尺の検討からスタートし,ほぼ予定通り予備実験まで完了することができた。計画当初からの見直しが生じたものの,予定していた模型の製作ならびに予備的な実験によるデータの蓄積を行うことができた。 2年目(2021年度)は,完成した実験系を利用して種々のパラメータに対する実験を行った。具体的には,火源規模(初期・盛期火災を想定)および位置(火災階),ならびに開口条件(開口部の開閉条件)をパラメータとして系統的な実験実施による結果から,シャフト頂部からの換気量(排煙量)を把握することができた。また,実験結果から排煙量に関する簡易的な算定方法も導出することができ,概ね順調に進展しているといえる。一方で流れの定量化はPIVにて実施を予定していが,実験系に多くの二方向間を設置することで,主要な箇所で流速を計測することが出来たためPIVによる計測は割愛しているが,流れ場が必要となった場合は,今後実施することも視野に入れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで,主として高層建築物を対象とした竪シャフトを利用した煙流動・排煙効率を目的に模型実験により基礎的な実験研究を実施してきたが,今後は,高効率煙制御を目指し,基礎的データを取得することを目的として,既往の知見に基づく電界の利用を試みる。その前段として,燃焼による煙の帯電状況の把握からスタートしたい。まずは煙粒子に着目して,種々の燃焼条件(加熱条件・燃焼材料)に対する帯電について定量的に明らかにする。さらに,別途,現在の模型を改良して実施する予定であるが,電界を利用した煙流動に関する実験研究の実施を予定している。具体的には,EVシャフト開口部等の隙間に電極を設置することで,電位差を与え,燃焼により発生したイオンを含む煙粒子が制御・誘導されることを確認していく。
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