本研究では,EVシャフト等の竪穴空間を煙突と見立て,煙の浮力を利用したスモークタワーをEVシャフトに適用し,排気・給気ファンに頼らず,長時間にわたる火災に対応すべく,効率の良い排煙手法の確立を目的としている。具体には,シャフトおよび接続する火災室の縮小模型を用いてシャフト頂部からの排煙能力を定量化,さらに排煙の効率化に向け,シャフトから他階への新たな漏煙防止方法として電界による煙制御の実用可能性についても基礎的な実験的検討を行うものである。 まず竪穴空間と居室の2室を対象に,シャフト開口部と居室開口部を階層ごとに接続可能な1/20程度の縮小模型の製作を行い,予備的な実験を経て,実験系を完成させた。この実験系を用いて,EVシャフトを排煙設備に活用する技術的可能性検討に資することを目的とし,種々の実験パラメータに対する本実験の実施,ならびに理論的考察を行った。実験では,主に火源規模および開口条件をパラメータとし,各開口での圧力分布や煙流動特性を明らかにし,さらにシャフト頂部排煙量について定量的な把握が系統的に行われた。EVシャフトを利用した排煙は,シャフト内の圧力分布,すなわち中性帯位置の把握が最も重要となるが,本研究では,その実験結果から開口部の開閉状態と中性帯位置をつまびらかにした。また,理論的考察により,シャフト内中性帯位置および排煙量算定の簡易予測手法を提案し,実験結果との比較により,その有用性についても確認した。 さらに排煙の効率化に向け,電界による煙制御を提案し,第一段階として煙帯電量の定量化を目的に実験的な検討を行った。その結果,安定的な煙の生成が可能な火源を対象に,煙粒子径分布ならびに帯電量が確認された。 以上のように,本研究では実験の実施,さらには理論的考察と明解な論述により,EVシャフトを利用した排煙効果に関する工学的に有益な知見を提示することができた。
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