研究課題/領域番号 |
20K04818
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
垂水 弘夫 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (70163706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射空調システム / ドライミスト / クールスポット / 被験者試験 |
研究実績の概要 |
本研究では,放射空調オフィスにおける省エネルギータイプのクールスポットとして,ドライミストエリアと椅座安静・気流付与エリアから成るクールスポットを提案し,外出行動後の人体のクールダウンを初期温冷感復帰時間という新しい指標を用いて評価する被験者試験を実施した。以下に,今年度の研究成果をまとめる。 1) 屋上歩行後のドライミストエリアと椅座安静・気流付与エリアの利用について,1回目経由と2回目経由における全身温冷感の低下傾向を調べたところ,温冷感申告を7段階とするときの低下ポイントの占める割合は,2回目経由よりも1回目経由の方が大きいことが確かめられた。 2) 初期温冷感復帰時間が最短となったのは,(ドライミスト曝露45秒+椅座安静・気流付与エリア滞在60秒+ドライミスト曝露30秒+椅座安静・気流付与エリア滞在30秒)とした試験ケースであり,BMI平均18.9の女2人グループで6分21秒,BMI平均24.0の男2人グループで8分14秒となった。クールスポットを経由しない試験ケースと比較して,それぞれ45.1%,37.1%の初期温冷感復帰時間の短縮効果が認められた。 3)ドライミストエリア及び椅座安静・気流付与エリアを1回経由するときと2回経由するときの初期温冷感復帰時間を,クールスポット非経由時に対する短縮割合で比較したところ,BMI平均24.0の男2人グループでは,1回経由よりも2回経由時に効果が増大する傾向が把握された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の被験者試験では、クールスポットの冷却にエアコンを用いていたエリア設定を止めて、気流付与エリアを設定した。要するに、ドライミスト曝露エリアと気流付与エリアの2つの組み合わせで、人体のクールダウンを図るようにしたものである。 放射空調の執務スペースは、主にZEB(ゼロエネルギービル)に設置されるものであるから、大量の電力を消費しながら22℃レベルにまで冷却するクールスポットを設置すること自体が、建物の一部のスペースとは言え、カーボンニュートラルを前提とした建築にそぐわないと考えられるからである。エアコンの運転には少なくともkWレベルの電力消費が必要になるが、ドライミスト噴霧と気流の生成には数十ワットレベルの電力消費で十分である。 今年度の研究では、エアコンによってクールスポットを形成しなくても、ドライミストエリアと椅座安静・気流付与エリアによりクールスポットを形成することで、22℃に冷却したクールスポットにほぼ近い初期温冷感復帰時間で被験者のクールダウンが可能という結果が得られた点に、最大の特徴がある。 このことより、当初予想した以上の進捗がみられると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究の3年度目にあたる今年は、椅座安静・気流付与エリアにおける気流速度を、1.0m/sとしていたところを、1.5m/s、2.0m/sまで上昇させ被験者試験を実施すること、また、外出行動から放射空調の執務空間に戻った後は、これまでは1.2Metの代謝条件の事務作業を行っていたところに、近年よく実際のオフィスで利用されているUSBファンを使用を可能とすること、これら2つの実験条件により被験者試験を組み立てる予定である。 即ち、クールスポット形成に必要なエネルギー消費を抑制する中で、初期温冷感復帰時間をエアコン使用時と同レベルにまで短縮可能な、ドライミスト曝露と気流付与条件を見い出すことで、放射空調オフィスの弱点とも言える外出行動時の課題(長時間在室者を対象としたマイルドな放射空調条件により、短時間で体内蓄熱を除去できない)をクリアして、当該研究の総まとめとすることを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の関係で54円の次年度使用額が生じた。 次年度の物品購入に使用予定。
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