本研究では,放射空調オフィスにおける省エネルギータイプのクールスポットとして,ドライミストエリアと椅座安静・気流付与エリアから成るクールスポットを提案し,外出行動後の人体のクールダウンを初期温冷感復帰時間という新しい指標を用いて評価する被験者試験を実施した。以下に,2022年度の研究成果をまとめる。 1) 椅座安静・気流付与エリアにおける気流速度を、昨年度の1.0[m/s]から1.5[m/s]、2.0 [m/s]へと増加させた試験の結果、1.5[m/s]とすることで初期温冷感復帰時間を1.0[m/s] の6分41秒から4分55秒に短縮され、約26%の短縮効果が得られた。1.5[m/s]から2.0 [m/s]とする試験においても、初期温冷感復帰時間の短縮効果が認められたが、その差は21秒にとどまることが把握された。 2) 放射空調室に帰室後、卓上のUSBファンを利用する場合は、ドライミストエリア45秒+椅座安静・気流付与エリア60秒(気流速度2.0[m/s])+ドライミストエリア30秒の試験ケースにおいて、初期温冷感復帰時間は3分42秒の最短時間となることが明確にできた。 3) また、放射空調室の温熱環境レベルのコントロールに関して、複数の情報が必要なPMV制御ではなく、1つのセンサを用いて簡易制御を実施する場合について、選択すべきセンサと設置位置の検討を行った。その結果、支柱を立てて室内に乾球温度センサやグローブ球を置くときに目標とするPMVランクとの対応率の高いケースがみられたが、高速グローブ球をセンサとして使用するとき、壁表面に設置しても室中央とほぼ同等のPMV対応率が得られることを明らかにできた。
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