環境配慮型都市の実現に向け、石川県金沢市中心市街地を対象とした上で、1)都市計画・建築設計の実務者が活用できる都市環境気候図の作成および、2)建築設計支援のための「デジタル環境カルテ」作成および環境シミュレーションを用いた建築設計教材の作成と実践に取り組んだ。 最終年度(2022年度)は、主に次の2つを行なった。1)都市環境気候図(気候分析図)について、既往研究データを追加した上で、熱環境・都市情報を自由に重ね合わせられるGIS データを作成した。また前年度までの実務者との意見交換結果を踏まえ、地域性を考慮したタクティカルアーバニズム(短期的で低コストなアクションを通してまちを変える手法)の具体案を提案した。さらにその一部実践として、用水の利活用と暑熱環境緩和の観点より、用水を用いた道路散水実験とそこでの熱環境実測、通行人の意識調査を行なった。2)フロントローディング概念に沿った建築設計を行うための、環境シミュレーションを用いた気候分析・ボリューム検討の手順書を提案した。また前年度に作成した環境評価の手順書と合わせて、気候分析、ボリューム検討、室内環境評価までの一連の検討を通して建築設計を行うパイロット授業を実践した。 期間全体の成果としては、主に次の2点となる。1)都市環境気候図(気候分析図)について、GIS データを作成し、閲覧・操作性を高めた。また実務者との意見交換を通して、環境シミュレーション評価、費用対効果を含めた計画指針図を作成した。さらにタクティカルアーバニズムの提案と、その実践としての用水を活用した道路散水の社会実験を行なった。2)建築設計支援としてのデジタル環境カルテについて、Webで操作できる3Dビューアーとその動画教材を作成した。さらにその展開として、気候分析・ボリューム検討・室内環境評価の一連の手順書作成とそれを用いたパイロット授業を行なった。
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