有害性の低い臭気による不快感には、マスキング効果による不快感の低減を行えば換気を可能な範囲で削減できて空調負荷削減を図ることができるという考えに基づいて、これまで使用したマスキング臭とは異なるPerillaldehyde(シソ香)を用いて、オフィスで想定されるカビ由来臭の化学物質を被マスキング臭に設定して混合集の主観評価実験を実施した。多種のにおいに対するデータが必要と考えたことから、カビ由来臭にはAcetone、Acetaldehyde、1-octen-3-ol、3-octanol、3-octanone、Isobutyl alcoholの6 種を充て、それぞれ3段階の濃度条件とした。計18の被マスキング臭とマスキング臭の単体試料と組合せ試料によって、総計37条件の試料を20名の実験参加者に評価させて、においの強さ、快・不快、印象、許容の可否について評価させた。混合臭の臭気強度および快・不快度は、被マスキング臭の評価に近くなる傾向になる組合せが多かった。マスキング臭に設定したPerillaldehydeの評価がやや不快側だったことが影響したと考えられた。また、既報にて提案した、被マスキング臭とマスキング臭の臭気強度差と、混合臭と被マスキング臭の快・不快度差との相関を算出したところ、これまでの検討例と比較して低相関ではあったものの、-0.66の相関係数が得られた。複数の被マスキング臭データをひとつにまとめて表示した本検討の場合でも、比較的高い相関だったことは、提案した「被マスキング臭とマスキング臭の臭気強度差と、混合臭と被マスキング臭の快・不快度差との相関」はある程度有効な予測手法と言えた。一方で、実験で得られた同相関関係の両軸の絶対値が小さかったことから、より大きな値でも再検討も必要と判断された。
|